生成AIの登場により、学校の「国語」の評価が変わってくるだろう
今、本の要約をするサービス「flier」(https://www.flierinc.com)や、本のあらすじを紹介するYoutubeや音声配信が人気です。
受験生や忙しいビジネスマンやワーキングマザーなど、隙間時間を少しでも有効活用したいひとが使っている印象です。
私も、公務員試験対策時に、古典のあらすじが載った本を活用した覚えがあります。
しかしながら、私はこういったサービスは、そのうち消えていくのではないか、と考えています。
ChatGPTなどの生成AIの登場がその理由です。
生成AIに関して詳しいわけではないのですが、ChatGPTを使ってみたところ、本一冊とか大量のインプットに対して、それをコンパクトにまとめたものを返す(アウトプットする)ということは得意な印象を受けました。
これからは本の要約やあらすじ作りは、AIに頼めばやってくれるのではないでしょうか。
また、生成AIの登場により、これからは学校の国語の評価についても、変化が出てくるように思います。
これまでは「論旨をつかめる人」=「要約が得意な人」=「国語の点数が高い人」でした。しかし、そういったことはAIが得意です。
宿題もAIが解いてしまうでしょう。
そうなると、国語のテストは「いかに生成AIをうまく使いこなせているか」を測るテストになってしまいます。
これでは国語ではなく、情報科目のテストになってしまいます。
ですので、これからの学校の「国語」では、独自の、そのひとにしかできない本の読み方や着眼点のユニークさなどが評価されるようなスタイルに変わっていくのではないか、と思います。
今後は要約のレベルが高くなくても、オリジナリティの有無で読書感想文が評価されるようになるはず
こういった時代の流れは、悪いことばかりではない気がします。
これまで読書感想文が苦手だったひとにもチャンスが出てきた、ということです。
これからの読書感想文は、自分がとても印象に残ったシーンにフォーカスするだけでいいのではないでしょうか。
私はブログを始める前から、長年にわたって友人宛に手紙やメールマガジンを大量に書いてきました。
そのほとんどが音楽や映画、本のレビューです。
レビューというのは、言ってみれば感想文です。
レビューを書くこと自体がとても好きなので、SNSなどで発信しなくても、またフォロワーがつかなくても、書き続けることができました。
そんなに好きでたくさん書いてきたレビューですが、小中高と夏休みの課題に出る読書感想文で、学校から評価されたことは実は一度もありません。
読書感想文だけでなく、定期テストや受験での国語の点数もあんまりぱっとしないタイプでした。
それは、「いかに要約できるか」「論旨をつかめているか」という点が、学校での「国語」という教科では評価対象になっているからだと思います。
私は今でもこれが超苦手。
夏休み明けにみんなの前で褒められる読書感想文は、まずここクリアしているものが多いです。
その上で、国語の教師が「著者の最も言いたい部分」だと判断する部分にしっかり触れ、国語の教師が喜ぶような内容(反社会的な内容とかはダメ)の感想をプラスして書いている。
そういうものが評価されるように思います。
私は小さいころから、そういうことを見抜いていながらも行動に移せない子どもでした。
どうでもいい分野ならうまくそっち側にあわせることもできるのですが、たぶん、私にとって国語は「どうでもいい」分野ではなかったのだと思います。
いつかは、自分の表現の仕方で評価されたい。
そう思って、いつも全力で読書感想文を書いていました。
結局、取り組んでいるエネルギーに対し、あまりに見返りが少なかった読書感想文という課題でしたが、中学の時に面白い出来事がありました。
国語の問題の解答としては×だけど
中学生のころ、定期テストが終わると採点された答案用紙の返却は、名前を呼ばれ一人一人教壇で受け取っていたのですが、その際、生徒に簡単なアドバイスや応援の言葉がけをしてくれる先生もいました。
あるとき、国語の先生が「ここ、この回答だと〇はあげられないんけれど、(先生は)こういう感じ、いいと思う」と言いながら、答案用紙を返してくれました。
詳しい状況は思い出せないのですが、自由記述で、著者の意図を問うような問題だったと記憶しています。
それまで絵は得意で賞をもらったりすることはありましたが、国語や作文で褒められたことはほとんどありませんでした。
そんな私が、自分の最も身近な文章の専門家である国語の先生から「着眼点がユニークでいい感じ」と言ってもらえたことは、文章の分野で自分のよさをはじめて発見してもらえた出来事でした。
図書館員の仕事には、本の紹介文を書くことも含まれます。
大学では図書館関係とはまったく縁のない分野を専攻しましたが、のちに図書館員になったのは、もしかしたら国語の先生からのこの一言が、何か文章を書く上での拠りどころになっていたのかもしれません。
この先生はちょっと変わっていて、服装や車にこだわりがあり、クラシックカーに乗って通勤していました。
今でこそ、雑誌『FUDGE』に出てくるようなクラシックなファッションが通勤スタイルの一つとして容認されていますが、そのころそんな恰好をしている公立中学の教員なんて一人もいなかったのです。
ジャージで通勤する理科の先生がいるような地方の学校だったので教員の集団から浮いていたし、保護者からの評価も賛否あっただろうなと思います。
ですが、こういう、窮屈な世界でも自分のスタイルを貫いている先生に言ってもらえたことが、今振り返ると大事だったんだと思います。
これからの読書感想文は、自分がとても印象に残ったシーンにフォーカスするだけでいい。
話が戻りますが、私が読書感想文について「自分が特に印象残ったシーンについてフォーカスするだけでいい」と考える理由は3つあります。
1.映画や音楽のレビューには、作品のごく一部分だけにフォーカスして書かれたものが結構あるから
皆さん、映画の批評をしているサイトや、楽曲やアルバムのレビューをしている音楽記事などを読んだことは一度はあるのではないでしょうか。
これらの書き方に注目してもらいたいのですが、映画の場合、ワンシーン、もっと思い切ったものだと、ワンカットだけにフォーカスして「ここがすごい」というように書かれているレビューがあります。
これは、ストーリーのネタバレを防ぐという理由もあると思いますが、「この書き方でもちゃんと感想文として成り立っている」というところに着目してください。
また、音楽の場合も、曲を構成している要素は、歌詞や楽曲だけでなく、それを演奏するひと(ボーカリストだけに注目されがちですが、バックで演奏しているひとも全部ふくめて)、アレンジしたひと、レコーディングエンジニア、どのスタジオで録音したのか、使っている楽器は何か、何風のアレンジか、などさまざまありますが、誰かに曲の感想を尋ねると、だいたい①メロディー②歌詞③ヴォーカリストについての感想が返ってきます。
つまり、映画や音楽の感想では、読書感想文のように「全体を把握したうえでコンポーザーの意図を鑑みて書いたものでないと感想文にならない」、なんていう厳しいことは求められていないんです。
また、その作品のどの部分についてフォーカスしたか(例えば、音楽ならベースラインとか)によって、書き手のオリジナリティーを出すことさえできます。
2.要約やあらすじ部分は、実はあまり読まれていない
私は要約やあらすじを書くことが、大変苦手です。
文章が短いわりに、作るのに時間がかかります。
しかも、その割にあまり読まれていないような気がします。
大体、たいていの本の要約はAmazonや本の販売サイトなどに既に掲載されているのです。
これまでの読書感想文では、あらすじや要約を載せることは必須のような扱いでしたが、読書感想文にも要約の載っているサイト(Amazonの該当書籍のページなど)へのURLを載せればいいのではないでしょうか。
(あらすじはこちらURLをご覧ください。等)
国語の先生は驚くかもしれませんけど。
3.読書のアカウントのフォロワーは、あらすじが知りたいわけではない
本を紹介するサイトや、インスタやツイッタ―などで読書アカウントを運営しているひとはたくさんおられます。
こういうサイトやSNSを見るひとは、要約やあらすじを知りたいわけではないはず(上記に書いたように、Amazonにありますから)。
では、何を求めているのでしょうか。
おそらく「自分はあの本を読んでこう思ったけど、他のひとはどう思うのかな?どこに感動したのかな?」という、そのひと独自の心に響いたポイント(=オリジナルの着眼点)を知りたくて、サイトやSNSに訪れているのだと思うのです。
また、「どんな本が紹介されているのだろうか」という、本のセレクトにも興味を持たれていると思います。
何れにしても、全体を把握し要約する能力よりも、「どこに着目し、どれを選ぶか」という、そのひとならではの情報の切り取り方が、アカウントやサイトの魅力になっています。
「このひとが紹介しているから、この本を読んでみよう」と誰かの心を動かすことは、夏休みの宿題で提出する読書感想文では難しいでしょう。
さいごに
結局、生成AIの登場後の今、読書感想文は、要約やあらすじなどは特に載せずに、自分が特に印象に残ったシーンにフォーカスして書けばよい、と私は思います。
少なくとも私は優等生的に書かれた隙のない要約が載った読書感想文よりも、「他のひとにはどーでもいいシーンかもしれんけど、オレにはここが響いた」「ここで腹を抱えて笑ってしまった」という感想文に面白みを感じます。
読書の記録としても、今また注目されている読書感想文。
「自分的にはここが一番印象に残った」というメモを、大きめのふせんに書き、本に貼っておくというのはどうでしょう。
今読んでいる本から、気軽に始めてみてはいかがでしょうか。