本をどこで買う?
今回は、本の買い方について、私がいつもやっていることをお話したいと思います。
みなさんは本を買うとき、どこで買っていますか。
「え、あんまりどこで買うかは考えたことない」
「一番安いところで!」
こういう方がほとんどかもしれません。
「ポイントを使いたい」「お買い物マラソンを利用したい」というひとは、楽天を使ってらっしゃるかもしれません。
「中古でも構わない」という場合は、メルカリを使うひとも多いでしょう。
今応援の方法として流行っているクラウドファンディングなどを使わなくても、本を書いているひとやお気に入りの本屋さんを応援する方法があるんです。
著者を応援したいなら中古ではなく新品を買う。書店を応援したいなら、その書店で買うようにしよう。
それは、著者(本を書いているひと)を応援するなら新品(か電子書籍)を買う。
お気に入りの本屋さんを応援するなら、本はその本屋さんで買う、ということです。
もし、著者も本屋さんも同時に応援したいのなら、お気に入りの本屋さんで新品の、紙の本を買いましょう。
なぜかというと、中古で買うと、著者には1円も入らないからです。
本を書いた人には、印税という収入がありますが、これは新しい本が売れないと入りません。
いくら中古の本が売れても、書いたひとの収入にはならないのです。
また、電子書籍は主にAmazonや楽天などで扱いがありますが、そこでどれだけ買っても、街の本屋さんにはお金は入りません。
当たり前ですが……。
仕入れの方法や出版社にもよるのですが、新品の本の場合、粗利率はおおよそ2割です。
例えば、1000円の本が1冊売れたとしても、本屋さんの手元に残るのは200円です。
ここから、家賃や人件費、光熱費などの経費を払って、その後残ったものが純利益となります(※1)。
ネットで本が買えるようになってから、新刊書店(古本を扱わず、新品の本のみを扱う書店)が、どんどん、つぶれていくのもうなづけます。
私の買い方
では、自分がどういう買い方をしているか、という、もう少し具体的な話に入りたいと思います。
私の場合以下のような感じで買い方を分けています。
1.比較的新しい本の場合
→できるだけ応援したい書店さんで買うようにしています。
そのため、私は電子ではなく紙の本が多いです(kindle作家さんの本は電子で買いますし、ものすごく厚い本は持ち運びが大変なので電子で買っています)。
2.その著者のファンで応援したい場合や、作者がベストセラー作家さんではなく細々と書いておられる方の場合
→著者に印税が入るように、中古ではなく、新品の本を買うようにしています。
例えば、前回ご紹介した『おやすみ短歌』という本は、去年秋に出版されたばかりの新刊であり、しかも「短歌」という非常に売れにくいジャンルの本です。
歌集は売上が出版前から見込めないため、ほとんどが自費出版だと聞きます。
カネの回らないコンテンツは衰退するのか(短歌を例に)
https://v.ouj.ac.jp/view/ouj/#/navi/vod?caa=1710214p
「歌人」という肩書で生活していけるのか?ということについて書かれた記事です。
関わったひとたちが少しでも作品づくりに専念できるよう、またこの本を店頭に並べてくれた本屋さんにありがとうという気持ちをこめて、この本は旅先で訪れた個人経営の新刊書店で購入しました。
3.そのほかの本
本当はすべての本を新品で買いたいのですが、なかなか経済的にゆとりがありませんので、売れている作家さんやビジネス書の類は中古で買ったり、図書館で借りています。
もう絶版で中古でしか手に入れることができない本についても、同様です。
「本の代金を誰に手渡したいか」を考えれば、紙の本か電子書籍かも決まってくる
そのため、「どこで買うか」ということについても、みんなそれぞれのポリシーがあるだと、思っていました。
ところが、あるとき「本は全国どこで買っても同じだから、できるだけ応援したい本屋さんで買うようにしている」という話をしたら、「そういう買い方もあるんですね!知らなかった!」と驚かれ、自分にとっては当たり前のことでしたが、意外と知られていないことなんだな、とブログに書くことにしました。
「どこで買うか」という自分なりのポリシーが決まると、「電子か紙か」ということも決まりますよね。
お気に入りの書店や街の本屋さんを応援するなら、自動的に紙になります。
でも、そうではなく、「応援」や「継続性(著者が今後書き続けていけるか、本屋さんが今後、経営を続けていけるか)」という指標で考えると、また違った選択肢が現われます。
お気に入りの新刊書店が店を継続できるように
今、市区町村内に一軒も本屋さんがない、という自治体が全国の4分の1以上になっています(※2)。
地方に住んでいるひとによっては、学校や買い物の帰り道、本屋さんがあったか、なかったかで、将来が変わっていた可能性があった。というひともいたでしょう。
また、「本屋さんがあるかどうか」はその街の文化度の指標にもなっていて、移住先の検討要素にもなりうるものです。
もし、近所にこれからも続いてほしい本屋さんがあるなら、「早く手に入れる」ということはいったん置いておいて、次に買おうと思っている本は街の本屋さんで買ってみませんか。
店頭になければ、注文や取り寄せしてくれることがほとんどです。
あなたのちょっとした選択が、街の風景を守ります。
※1
内沼
晋太郎『これからの本屋読本』(NHK出版, 2018)より
※2
朝日新聞デジタル 本屋ない市町村、全国で26% 業界はネット書店規制を要望、懸念も(2024.2.24
sited)
https://www.asahi.com/articles/ASR3056M2R30ULEI004.html