きっかけは「暮らしに活かす不動産学」という科目の存在を知ったこと
2024年4月から科目履修生として、放送大学に入学することにしました。
自分の日常性の質を高められそうな、「暮らしに活かす不動産学」という科目があったからです。
「暮らしに活かす不動産学」の概要を紹介をしている放送大学の公式youtube
https://www.youtube.com/watch?v=s9jfG9_LjEs
おそらく、宅建士(宅地建物取引士)の勉強をすれば、一通りの不動産の知識は得られるでしょう。
しかし、不動産業界に就職したいわけではないので、こんな難関資格(以下の記事によると、合格率17%)の勉強をするほどの時間はありません。
↓小学生が宅建に合格した記事
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240115-OYT1T50002
そこで、図書館や書店で自分が知りたい不動産や住まい、暮らし方についての本を探してみました。
ところが、内容は不動産投資や不動産ビジネスに偏っていて、私の知りたいことが書かれている本はなかなか見つかりませんでした。
「専門家(不動産業界の方)に相談したら?」とおっしゃる方もいるかもしれません。
ですが、それは更に意味がない、と私は考えます。
移住を検討しており、昨年は多くの不動産関係の方に会いました。
しかし、私が住むための家を「物件」と呼び、建物や土地を「商品」としか見ていないひとがほとんどで、根本的な部分で価値観が共有できないのです。
住まいは売り手にとっては「商品」なので、契約が成立すれば終わり。
契約後に、私がその家で快適な暮らしを送れるかどうかは全く考慮しないまま、アドバイスをくれます。
また、自分のビジネスが優位に働くような発言を、さもそれが「お客様にとってもプラスで、世の中的にも正解」だと説明してくるひとまでいました。
こういうひとに会ったことで、この業界に関わるひとのモラルを疑うようになりました(もちろん、ちゃんとしたひともいましたが)。
例え賃貸アパートであっても、住まいに係わる支出は、多くのひとにとって生活の中で最も大きな支出です。
毎月の支出額から考えると「数万円」という小さな支出だと思ってしまいがちですが、1年分と考えると家賃が月3万円だったとしても、36万円。
海外旅行など一括で支払うことに置き換えてみると、高額な買い物です。
そんな大きな買い物について、モラルを疑ってしまうようなひとに相談できるでしょうか……?
不動産についての知識が乏しい私たちが、彼らのアドバイスをそのまま信用してよいものでしょうか……?
そこで私は、不動産業界寄りの話ではなく、中立的な立場で体系的に学ぶ方法がないか、生活者の立場に立って「暮らし」や「生き方」の面から、不動産や住まいについて学ぶ方法がないか探し、この講座を見つけました。
先日テキストが手元に届きました。そこにはこのように書かれています。
住まいに問題があれば、私たちの暮らしは一変してしまいます。住まいは他のものと違い、簡単にとりかえることはできません。放送大学では、生活や暮らしの視点から不動産を学ぶことを大切と考え、「生活者のための不動産学 入門(2013年開講)」、「生活者のための不動産学への招待(2018年開講)」を開講してきました。今回の「暮らしに活かす不動産学(2022年開講)」は、本シリーズの第3になります。シリーズ第1では、いままでの不動産学は、不動産業者や不動産にかかわる専門家などを主に対象にしたものから、目線を生活者にするという試みにチャレンジしました。
齊藤広子、中城康彦『暮らしに活かす不動産学』 テキストより
まさに私が期待しているような内容が学べそうです!
放送大学の学びの仕組みは時代の最先端!
放送大学webサイト
https://www.ouj.ac.jp
ところで、みなさんは放送大学にどんなイメージをもってらっしゃいますか。
失礼ながら、「いろいろな事情で10代後半に大学へ行くことが難しかった方が、社会人になってから大卒資格得るために行くところ」という、どちらかというと暗い、明るいキャンパスライフとはちょっと違う、影のあるイメージを私はもっていました。
ですが、放送大学について、そういった見方をしていると、せっかくの学びのチャンスを逃してしまうかもしれません。
自分が入学するにあたり、放送大学の仕組みについて調べてみると「学びのシステム」としては最先端の大学だということが分かってきました。
この記事では、(もう知っているひとには当たり前の内容かもしれませんが)放送大学について私が「これはすごい!」と思った点を紹介します。
これまでとは放送大学のイメージががらりと変わるかもしれません。
放送大学はコロナ前から時代を先取りしていた、「学びの仕組み」が最先端の大学でした。
大学の講義を受けることと、自分で本を買って学ぶことの違い
今回の私のような、「不動産について生活者目線で中立的な情報を知りたい」というケースは、特殊な事例だと考えるひともいるかもしれません。
「わざわざ履修しなくても、ネットや本で勉強すればいいんじゃないの」
確かにそう感じるのも分かります。
そこで、大学の講義を受けることのメリットをお話していきたいと思います。
自分にとっては専門外の分野について、本で学ぼうと考えたとしましょう。
書店で売られている玉石混交の本のなかから、自分が知りたい内容について書かれている、自分のレベルに合った内容の本を選ぶことだけでも、とても難しいことです。
「ある分野について学びたい」と思った時、最初に調べるのは「本」ではなく、今その分野で注目されている研究者が誰なのかということを知ることです。
そして、そのひとが書いた本やその周辺の本を探していく、というのが手順です。
※ちなみにいきなり「本」から探し始めてしまった場合、Amazonなどでその分野の本をキーワード検索することになると思うのですが、それではAmazon側が「売りたい本」「売れ筋の本」の情報が並ぶだけです。
中古や新品など流通している本しか対象になりませんので、その分野においては絶対に読んでおいた方がいい本が絶版で流通していなかった場合、図書館では見つけられるかもしれませんが、Amazonでは検索対象にすらならない可能性があります。
こんな時間や労力のかかるプロセス、専門外の分野でできるでしょうか?
本を選ぶだけでも、ものすごく時間がかかります。
しかも、これはまだ学びのスタートに立っただけです。
読み始めて学び始めないと、その本が自分が求めていたことが学べる内容なのかも自分の学習レベルにあった本なのかもわかりません。
もし、あわない本を選んでいたら、また選ぶところからスタートです。
ですが、大学を利用すれば、こういった学習資料の選択プロセスをカットすることができるのです。
また、この他にも、大学の授業にはよい点があります。
それは、その分野について「体系的に学ぶことができる」ということ。
これは私自身、大学時代に教授から教わって「なるほど」と思ったことの一つです。
「なぜ大学に行くのか」という、自分が抱えていた疑問の答えのひとつにもなった、私にとっては貴重な学びでした。
「体系的に学べるかどうか」ということが、大学や大学院の講義と、高校までの授業との差なのです。
そして、大学や大学院での講義のシステムを使わずに、それを「本」という、テキストや図だけの世界でおこなうのは、なかなか難しいことだと思います。
放送大学では45分の授業が15回、半年間あります。
この時間や分量の中で、じっくりと全体像を把握できるようになっているのです。
専門外の本を独学で選んで読んで…、でもちょっと違うので買いなおして…というひとよりも、効率的に、しかも体系的に学べるのが大学の講義です。
大学で学ぶメリットは、こういったところにあるのです。
では次は、その「大学」の中でも特に放送大学がすごいな、と思う点を3つ紹介します。
放送大学はタイパもコスパもいい
1.興味のある科目を、1コマから受講可能
放送大学での最短の在籍期間は半年で「科目履修生」として入ることができます。
科目履修生の場合、入学のための面接試験や志望動機などの書類提出もないですし、授業は一コマから受けられます。
学位に関係なく、好きな科目だけを履修する(放送大学サイト)
https://www.ouj.ac.jp/reasons-to-choose-us/school-credits-freely
私のように興味のある科目を一つだけ受けることがとても簡単な手続きでできます。
2.出願~テストまでネット(自宅から出ずに)で完結
現在はインターネットからの入学申し込み(ネット出願)ができるようになっており、コロナ以降は、単位取得のテストまで含めて自宅でネットで受験できるようになっています!
(対面が必要な一部の授業は除く)
学び開始までの手続きが、ユーキャンなどの通信講座なみに楽なのです。
入学手続きも授業の視聴も、テストも、すべてネットでできるという理由から、短期間在籍している社会人学生がたくさんいるようです。
こういった方々は、学士や修士の資格を取得する目的で放送大学に入ったのではなく、日々の隙間時間を専門的な学びに充てたい、と考えて入学しています。
かつての私のように、放送大学について「通信制高校の大学版」のようなイメージを持っている方もおられるかもしれません。
しかし、実は「時間をできるだけ有効に活用したい」という、現代のニーズにとことんフィットしたシステムの大学なのです。
3.一流の講師による授業を、リーズナブルな価格で全国どこででも受けられる
コロナ禍を経験した今、あらためて放送大学の仕組みに注目すると、いかに時代の先を進んでいたかが分かりますよね。
実は、放送大学には、どこでもいつでも受講することができ、限られた時間を有効活用できる、というメリット以外に、対面授業をやめたことで生まれた、放送大学ならではの強みがあります。
それは、対面授業の形式ではなくテレビやラジオという形式に変えたことで、その分野の第一線の研究者や分かりやすい説明をしてくれる能力の高い講師に講義をしてもらうことが可能になったということ。
多くの大学のように、放送大学が「基本は自分の大学に籍を置いている先生に講義をしてもらう」という仕組みだったら、こんなに質の高い授業の提供はできません。
この仕組みだと、授業が都内の大学で行われるのであればその時間にその場所にいけるひとしか講義を聞けないことがその理由です。
また、講師は交通費や時間をかけて会場となる教室に毎回行かなければならないですし、大学側も授業料はその教室(や大学)の定員分しか徴収できません。
放送大学は講義を録画し、全国で視聴できるようにしました。
教室の定員を、15歳以上の日本人すべて(放送大学は15歳以上なら入学できます)に広げたことで、一流の専門家の講義を一般の大学の授業料よりも安価で聞けるようになったのです。
最先端の知を追究する教授陣(放送大学サイト)
https://www.ouj.ac.jp/reasons-to-choose-us/act
こういった仕組み、実は放送大学以外の場所でもコロナ前から行われていました。
それは、全国展開の受験予備校や塾、TACやLECなどの資格取得の予備校です。
こういった学校では対面による授業も行なわれていますが、日本中の自社の予備校で、トップクラスの講師がおこなっている授業を録画しそれを全国の予備校生が視聴するという、「オンデマンド」での授業形態がスタンダードになっています。
教え方がうまい先生は授業に特化し、それを全国の受験生が視聴する。
他の講師は、質問に答えたり受験生のスケジュール管理をするのがメインの仕事、という風に役割がわかれているのです。
ちなみに、この仕組みを義務教育にも取り入れたら、教員の負担が少なくなるのではないか、と意見を提示している方もいます。
ちきりんさんのVoicy(音声配信)
2022/5/14 #577
教師が不足してるのは、時代遅れの授業スタイルが原因
https://voicy.jp/channel/1295/316611
※有料の配信です。
1,100円かかりますが、購入することにより、この回だけではなく2022年5月分(約30回)の配信すべてを聞くことができます。
※ちきりんさんの有料配信のルールについては、こちらで詳しく説明されています。
https://chikirin.hatenablog.com/entry/2021/12/28/230020
まとめ
放送大学って、時間もお金も有効に使うことを意識した、今の社会が求めることにフィットした大学だったんですね。
また、「住む場所や立場、収入にとらわれず、みんなに学びの機会を」と弱者に配慮する視点で考えられた仕組みが、結果的に全国民にとってもメリットのあるサービスになった、という点がとても面白いと感じました。
この記事をきっかけに「放送大学のイメージが変わった」という方もいらっしゃるかもしれません。
日々、なんとなくネットサーフィンやSNSチェックで浪費してしまっていた時間を活用して、科目履修してみようかな?と思ってくださる方が出てきてくれたらうれしく思います。
放送大学のインターネット出願のページ
https://www.ouj.ac.jp/application