今回の記事は、本に関する仕事についている図書館員や書店員の方だけでなく、一般市民の方(子どもから大人まで)に広く知ってもらえたらなあ、と思って書きました。
実は図書館は基本的人権の一つである「表現の自由」を保障する施設なんだよ、
というお話です。
前回の記事(【ご報告】サザンガク大感謝祭にて「本のよろず相談」ブースとして出店させていただきました!)に掲載済みですが、お世話になっている松本市のコワーキングスペース、サザンガクさまの周年イベント「サザンガク大感謝祭」にて、「本のよろず相談」という相談ブースを出店させていただきました。
その続きです。
「本のよろず相談」とは?
「本のよろず相談」とはどんなサービスだったかというと……
以下の二つから、来てくれた方にどちらかを自由に選んでもらい、対面の相談ブースで質問してもらいました。
①フリー相談
本や読書についてのお悩み相談を中心に承ります。調査が必要でその場での回答が難しい場合は、後日メールにてお送りいたします。
②相談メニューからの相談
相談メニュー(20個ほど)の中から、興味のあるものを選んでもらい、その場ですぐお答えします。
図書館にも「よろず相談」に似た相談窓口があるって本当?
実は、この「よろず相談」とよく似たサービスが図書館にもあるんです。
それは「レファレンスサービス」というもの。
図書館員が利用者からの質問や調べ物に答えてくれるサービスです。図書館の資料を使ったり、回答の含まれる情報源を提示・照会することで回答します。対面だけでなく、電話やメールなどでも受けつけている図書館が多いです(※1)。
レファレンスサービスのイメージ(苫小牧市立中央図書館のwebサイトより)
図書館が無料でこのような相談をやっていること自体、あまり知られていないようなんですよね。
ぜひ、活用してみてくださいね。
例えば、各図書館のウェブサイトにはこんな感じでレファレンスサービスの案内が載っています。
松本市図書館のレファレンスサービス案内https://www.lib.city.matsumoto.lg.jp/0000000027.html
大阪府立中央図書館の中高生向けサイトでのレファレンスサービス案内https://www.library.pref.osaka.jp/central/benriyan/tsukau/reference.html
はこらいふ図書館(徳島市立図書館)のレファレンスサービス案内
https://www.city.tokushima.tokushima.jp/toshokan/riyou_annai/faq/QA-reference.html
レファレンスサービスではできないこと
大人も子どもも利用できる、便利な図書館でのレファレンスサービス。
ですが、「本のよろず相談」でおこなっていたような、カジュアルな相談は難しい面もあります。
例えば、「あらかじめ具体性のある質問メニューを作っておき、そこから利用者が選んで質問する」という形式は、図書館では実現が難しいと思われます。
↓これのことです。
②相談メニューからの相談
相談メニュー(20個ほど)の中から、興味のあるものを選んでもらい、その場ですぐお答えします。
その理由は、相談者の質問がオープンになっており、誰がどんな質問をしたのか、特定されやすい状況だから。
「え、それがなんで問題なの?」
そう思われるかもしれません。
実は、図書館は「個人情報」とされる情報の範囲が比較的広く、その扱いが非常に厳しいのです。
国民が安心して調べ物ができるように、「図書館員にどんな問い合わせ(読書相談)をしたか」、「いつ誰と来館したのか」、「どんな本を借りたか」ということは、図書館員は口外しないことになっています(※2)。
お子さんが借りた本のタイトルについても(乳幼児はちょっと話が違ってきますが)本人の同意なく、親御さんに伝えるということは、基本的にはありません。
図書館は基本的人権を保障する施設
では、なぜ図書館ではこんなに個人情報の取扱いが厳格なのでしょうか。
それは図書館は、憲法の基本的人権の一つである「表現の自由」や「知る権利」を保障している施設だからなんです(※2)。
ちなみに、「表現の自由」は憲法第21条に定められており、「知る権利」も憲法第21条に保障されているものと解釈されています(※3)。
また、図書館員なら誰もが知っている「図書館の自由に関する宣言」には、「すべての国民は、図書館利用に公平な権利をもっており、人種、信条、性別、年齢やそのおかれている条件等によっていかなる差別もあってはならない。」との記載があります(※4)。
「図書館」というと、「無料で本がレンタルできる」ということに着目してしまいがちですが、「無料の貸本屋」ではありません。
無料なのは、全国民が(経済状況や立場にかかわらず)アクセスできるようにするための手段なのだ、ということをぜひ知っておいていただきたいと思います。
いつもの図書館が違って見えるかも⁈
今回は、ちょっとかたい内容になってしまいました。
でも、経済的に困窮しても誰もがアクセスできる「知の殿堂」があるというのは、生活保護と並ぶ日本の素晴らしい仕組みではないでしょうか。
女性が教育を受けることが制限されている国や、お金があるひとしか教育が受けられない地域が世界にはある中、図書館の資料で学び生活を立て直すチャンスが、誰に対しても与えられている、ということです。
図書館と基本的人権や憲法との関係性について、「もっと知りたい」と思われた方は、↓こちらの記事が大変おすすめです。
図書館が支えている私たちの「知る権利」「図書館の自由に関する宣言」を知っていますか?
https://www.tokyo-jinken.or.jp/site/tokyojinken/tj-62-feature.html
今回の記事が、みなさんがいつもと少し違う視点で図書館をみるきっかけになったり、レファレンスサービスを知るきっかけとなればうれしいです。
そして、山水の「本のよろず相談」を見かけたら、図書館のレファレンスサービスではやっていないことなんだな~、と、すかさず(?)利用してもらえるとうれしく思います。
次回からは、テーマ連載に戻ります!
<参考URL>
※1
図書館のレファレンスサービスとは、どんなサービスですか?https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000027284
※2
図書館の自由 ~ 「図書館の自由に関する宣言」の意義とさまざまな事例 ~ https://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/%E7%A0%94%E4%BF%AE%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A/resume2011-1/2011-1-6tanaka.pdf
※3
広島県公式ホームページ 人権啓発冊子「思いやりと優しさのハーモニー ~ 楽しく学ぼう!人権のいろは ~ 」よりhttps://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/6347.pdf
※4
図書館の自由に関する宣言 日本図書館協会ウェブサイトhttps://www.jla.or.jp/library/gudeline/tabid/232/Default.aspx
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