私のストレス対処法 ~ストレスコーピング~

2024/10/11

日常性 本紹介

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みなさんはストレスが溜まったとき、どう対処していますか?

誰かの言葉に、立ち直れないほどのショックを受けて、家事も仕事も手につかないということ。私にはあります。

ストレスにどう対応してる?という話題。
「意外と身近なひととはしないなあ」と思い、今回、取り上げることにしました。

私のストレス対処は、コーピングリストづくりから

私は何年も前から「コーピングリスト」というものを作っています。

公認心理師の伊藤絵美先生の、こちらの著書で紹介されています。

伊藤絵美(2011)『ケアする人も楽になる 認知行動療法入門 BOOK1』医学書院
本の情報はこちら(出版社のサイト)

「コーピング」とは、ストレスに対する意図的な対処のこと(※1)。

自分がストレスや疲れを感じた時にこれをやったら気分がほぐれるだろう、楽になりそうという出来事について、あらかじめリスト化しておくというものです。

そのリストのことを「コーピングリスト」といいます。

ストレス発散法というと、キャンプや山登り、また、旅行などを思いうかべる方もいらっしゃるかもしれません。

こういった、移動して日常とは全く異なる環境に身を置くことは、とてもリフレッシュになりますよね。

しかし、これらの方法は時間もお金も必要で、実行するまでに予定を立てたり準備も必要です。
忙しいときや、あまりの落ち込みに動けないようなときには実行できません。

おすすめは、「その場で」「すぐに」「お金をかけずに」できるものです。

これを100個、あらかじめ作っておきます。

「え~!そんなに!!」って感じですよね(笑)。

私も何年もリストの更新をしていますが、未だに100個も準備できていません。

本を読んでいただく方がおすすめですが、こちらの記事にもごく簡単に「コーピングリスト」が紹介されています。

くよくよ癖を今すぐ脱出 心がラクになる100のリスト
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO10483670Z01C16A2000000/

なぜ、あらかじめ作っておくのかというと、本当に参ってしまっているときというのは判断能力が落ちているため、ストレスへの対処にならないような方法を反射的に選んでしまいがちだからです。

気の向くまま暴飲暴食し、翌日、「全然ストレス解消になっていなかった」、とさらに落ち込んだ経験は、誰しもあるのではないでしょうか。

そのため、あらかじめリストをつくっておき、上から順番に試していくという方法をとります。

私はやってみて効果があったものがリストの上位になるように、たまにリストを修正したりしています。

ばかばかしいと思った人は、ストレスセンサーがマヒしてるのかも

こんなこと、効果あるの?
やり方が機械的で『ストレス発散!』って感じがないよね。事務作業みたい。
海外旅行とかで、パーっと散財した方が発散できそうだけど。

そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。
何より私が20代のころだったら、そう感じたと思うのです。

こんな風に感じる方は、疲れやストレスに気がつくセンサーがマヒしているのかもしれません。

私の場合、20代まで、自分はとてもストレスに強くて、世の中の人がストレスに弱すぎると感じていました。

しかし、これはとんだ思い違いだったのです。

私自身は、ストレスを感じると、心身に負担がかかっていることを見ないふりをしたり、我慢する、といった対処を長年行っていました。

「ストレスに強いひと」=「我慢強いひと」だと思っていたのです。

こういった勘違いに加え、子ども時代に病気という形で表出しても親が「ストレスが原因ではない」という対応をつづけたため、ストレスセンサーが壊れてしまっていました。

私は幸い依存症にまで至りませんでしたが、学生で就活をしていた頃、あまりに深刻すぎる家庭内の相談(というよりグチの垂れ流し)を母から受け、自分の経験値や心のキャパを超えていたためか、寝酒をしないと寝れなくなってしまったことがあります。

寝酒は欧米では依存症につながる危険な行為だと知られていますが、日本人は気軽に行っているひとが多い印象です。

寝酒によって、睡眠の質が下がり、飲まないと眠れないという悪循環に陥り、ますますお酒の量が増えていってしまい、アルコール依存につながりやすく、本当はもっと気をつけるべき行動です(※3)。

また、私は20代の一時期、職場の人間関係のストレス(しかし、そのころはそれが「ストレス」だと認識できていなかった)で、毎週末、県外まで出て、繁華街に遊びに行き、散財しないと会社勤めをつづけられない、という状態にもなりました。

行くたびに、くだらないことにお金をつかってしまったことに後悔していたのですが、最初は少額でもストレス発散になっていたのに、だんだん刺激が足りなくなり、金額がエスカレートしていきました。

買い物依存症や自己破産などにならなかったからよかったものの、危うい状態だったと思います。

このように、大きなストレスを抱えてしまってから、衝動的に思いついたストレスコーピングは、効果がないどころか二次被害のようなものまで引き寄せてしまう可能性があるのです。

今振り返ってみると、どちらのケースも自分で対応できる範囲を超えており、専門家(カウンセラーなど)にかかる必要があったと感じます。

しかし、当時はそれほど問題のある心理状態だということにさえ、私は気づけていませんでした。

どちらも、一歩エスカレートしていたら依存症になってしまっていたかもしれません。

このような経験から、私は依存症は本人の自己責任の問題などではない、と思っています。

現状に甘んじるのではなく、自分なりに現状に対して対処するために行動した結果が、依存症につながることもある、と分かったからです。

私の場合、コーピングの方法が間違っていたのと、ストレスが小さいうちに気づくことができず、コーピングを開始した時期が遅かったのです。

こういった経験から、私h二度とこのような状況になるまでストレスを溜め込んでしまわないよう、ストレスコーピングという方法を実践するようになりました。

ストレスに強いひと≠我慢強く耐えられるひと

みなさんがイメージする「ストレスに強いひと」とはどんなひとでしょうか?

下に例を挙げてみます。

Aさん:どんなにきついことを言われても気にしないように見える、タフで打たれ強いひと

Bさん:打たれ強いことに加え、相手にもずけずけときついことを言ってくる。根はいいんだけど口の悪いひと

AさんもBさんも一般的には、ストレスに強いタイプのように思えます。

しかし、どちらも違うのではないか、というの私の考えです。

Aさんは、きついことを言われた時に自分自身が感じた、不快感について、適切なコーピングを行っていません。
Aさんが我慢したり、見なかったことにしたストレスは、消えてなくなったわけではなく、しっかり蓄積されています。

Bさんについては、Aさんと同じように、適切な対応をせずに溜め続けてしまった過去のストレスを、他人にぶつけることで解消しようとしているのかもしれません。

「我慢したり、耐えたストレスは消えることはなく、蓄積される」

このことをカウンセリングを通じて知ったとき、かなりショックを受けました。

なぜなら、私自身、小さいころから感じていたストレスをひたすら「我慢する」という方法で、何十年分も溜めてきてしまっていたから。

私の家族は、ストレスに対して、「ひたすら我慢する」「出来事そのものを、なかったことにする」「誰かにあたる」「お酒で憂さ晴らしする」という対処法しか使っていませんでしたので、コーピングのバリエーションが貧弱な中で育ちました。

その結果、溜め続けたストレスが20代~30代のころコントロールできなくなるくらい噴出し、怒りがおさまらない、大変つらい時期を数年にわたり、過ごすことになりました。

ストレスへの対処法については、私は学校教育で習った覚えがありません。
今もこういったことを教えていないのであれば、ぜひ保健体育の時間にでも、ストレスへの適切な対処やコーピングリストのことを教えてほしいと思います。

というのも、身近なひと(主に親)のやり方を子どもが踏襲してしまうことが多いのでは、と思うからです。

私の家庭のように、コーピングのバリエーションが貧弱な(そして不適切な)家庭で育つと、そういったストレス解消法しか知らずに大人になってしまう可能性があります。

このように、育った家庭によって子どもの学びに大きなばらつきが出てしまう内容については、私は義務教育で教えるべきだと感じています。

「たかがストレス発散法」と思われがちですが、「どうやってストレス解消してる?」というネタは、昔から雑誌やラジオのメール募集テーマなどにもよく取り上げられていますよね。
それだけ、多くの人が悩み関心を持っているテーマなのではないでしょうか。

また、先に挙げたように、ストレスに対して適切なコーピングができないと、依存症にもつながりやすくなります。

話が戻りますが、結局、ストレスに強いひとというのは、①小さなストレスに気がつくことができ、②ストレスがまだ軽い段階で適切なコーピングができるひと、なのです。

こういうひとは気分の上がり下がりが少なく、いつも印象が変わらず、おだやかな方が多いです。

私の家族のように、「ひたすら我慢する」「出来事自体をなかったことにする」という対処をしてきたひとは、①の「ストレスに気づく」というステップが抜けています。

まず、「ああ、自分は今言われたひとことで、傷ついているんだ…」、と認知することが大事です。

コーピングは、その後です。

意外かもしれませんが、ストレス耐性のあるひとは、小さなストレスについて、落ち込んだりめそめそしたりするプロセスを省略せず、ちゃんと通過しているのです。

むしろ、AさんやBさんに比べると、いつもくよくよ、もやもやを感じているひとに見えるかもしれません。

一般に思われている「ストレスに強いひと」のイメージとは大分違うのではないでしょうか。

ストレスコーピングは質よりも量

本書によると、心理学的ストレス研究では、コーピングの質ではなく、できるだけ幅広く多様なコーピングを使える人が心身ともに健康である、ということが明らかになっているそうです(※2)。

「海外旅行に行く」「休暇にキャンプへ行く」など、効果は高そうだけど今すぐにできないコーピングを2,3個持っているよりも、今その場でできそうな、ちょっとした気分転換になりそうなことを100個持っている人の方がストレスへの対処がうまい、つまり心身ともに健康である、ということになります。

また、「小説を読む」「○○というサイトを見る」など、ある種の動作(この場合は「読む」)に偏ったものばかりではなく、できれば、全く違う行動(「筋トレする」「お菓子作りをする」など)のものを交えて、バリエーションを持たせるのがコツのようです。

これは私の実感ですが、何年もストレスコーピングを行っていると、一定の効果があるコーピングが分かってきます。

それは、どのひとにも、ストレスを感じやすい状況や、いつも自分がカッとなってしまう言葉、場面のパターンがあるからだと思います。

ですが、自分のそういう傾向が見えてくるまでは、できるだけ数が多くバリエーションのあるリストを作ることをお勧めします。

Aというコーピングが効かなくても、Dを試したら楽になった、ということがあるからです。


秋と春はストレスを感じやすい季節と言われます。

お金もかからず、移動中の電車などでもスマホのメモなどで、気軽に作成することができるコーピングリスト。

ぜひ、大きなストレスを感じる前に、準備してみていただけたらうれしいです。

<参考サイトなど>
※1
伊藤絵美(2016)『ケアする人も楽になる マインドフルネス&スキーマ療法 BOOK1』医学書院、p.150より

※2
同上 p.151より

※3
シフト勤務の職場に必須の「寝酒」対策
https://www.ask.or.jp/article/494

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