ルチャ・リブロへ行こうか、迷っている方へ

2024/07/29

本の周辺

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木立の奥がルチャ・リブロ

奥大和にある自宅を開いた図書館、「ルチャ・リブロ」という存在

この記事では、先日訪問した私設図書館、ルチャ・リブロへのアクセスなどをご紹介したいと思います。

ルチャ・リブロという図書館をご存じでしょうか。
https://lucha-libro.net

正式名称は「人文系私設図書館 Lucha Libro」。2016年に開館しました。

学芸員で研究者(古代地中海史)の青木真兵さんと、元大学図書館司書の海青子(みあこ)さんご夫婦がご自宅を開放し、月に10日ほど開いています。

こう書くと、ルチャ・リブロについて予備知識がないひとには定年退職後に趣味で開いたのかな……と思われそうです。

ですが、お二人とも筆者と同世代。
「趣味」などではなく、もっと切実な思いを持って図書館を開館させました。

開館後7、8年たちますが、奈良と松本市(長野県)とのアクセスはあまり良いとはいえず、松本在住時、行ったことのある図書館員は周りにはいませんでした。

ですが、本の販売も行っている、松本城ちかくのパン屋さん「サパンジ」(https://www.facebook.com/nichijyousapanji/?locale=ja_JP)さんではレジの真横に、『彼岸の図書館 -ぼくたちの「移住」のかたち』(青木真兵・海青子著 2019,夕書房)を面陳列していたり、松本駅前の書店 丸善さんにも『山學ノオト』など青木さんの著作がいくつも置かれていたり、と山村で成り立つ長野県内では一部の方から常に注目されている存在だったといえると思います。

ただ、私のまわりの図書館員からはルチャ・リブロの話題が出たことはありませんでした。

どちらかというと、「図書館」というキーワードよりも、「移住」「過疎地」「地方活性化」「地域の文化拠点」という文脈で紹介されることの多い施設かもしれません。
私も、最初にこの図書館のことを知ったのは、新しいライフスタイルを提案する、暮らし系雑誌だったように記憶しています。

さて、ルチャ・リブロに並べられている図書は青木さんご夫婦の私物であり、約2000冊もあるそうです(※1より、2017年取材時。現在はもっと多いかもしれません)。

本には持ち主の付箋がはられていて、友人から本を借りるような、肩ひじ張らない気楽さを感じます。

ですが、ここは図書館。
資料は公共図書館のようにきちんとバーコードで管理され、システム化されています。

また、こちらの図書館の魅力は、蔵書を通して青木さんご夫婦の知性に触れられることに加え、図書館わきに川が流れる、山の中にあるという立地です。

こういった環境での読書時間を楽しみに、この図書館を訪れるひとも多いのではないでしょうか。

静かな館内に足を踏み入れると、それまで読もうと思っていた本とは別の、普段はあまり読まない分野の本を手にとってしまいそうです。

公共交通機関を利用して、平日のルチャ・リブロへ行くには

ルチャ・リブロがあるのは、奈良県の東吉野村。

山の中といっても、公共交通機関でアクセスすることができるというのが、いいなあと思います。

ルチャ・リブロのwebサイトにも親切な道案内があるのですが、今回は私自身のレポートも加えつつ、行き方を紹介します。

ルチャリブロWebサイトに掲載の道案内
https://lucha-libro.net/542

こういった方の参考になる情報です

・車ではなく、電車とバスなど公共交通機関を利用していきたい

平日に行きたい

近鉄榛原(はいばら)駅へ

まずは近鉄の榛原駅を目指します。平日は榛原駅からルチャリブロの最寄りバス停まで、奈良交通バスが運行しています(休日はバスの運行状況が異なるため、今回のレポートは参考になりません。ご注意ください)。

バスは一日に数本しかありません。事前しっかり調べましょう。バスに合わせて電車の時間を決めます。

近鉄奈良駅からは、接続がスムーズでも1時間ほどかかります。

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榛原駅ホームに到着

公共交通機関を利用して地方へ旅行するひとにとって、乗り継ぎまでの時間を過ごす場所があるか、駅前に食事ができる店があるか、というのは大事なポイントです。

こういう問題は、自家用車があれば解決しますが、天候の悪い季節に公共交通機関のみで出かける場合は結構気をつけないといけない点。

大きな都市の感覚で、駅前にチェーン店のカフェや喫茶店があるだろう、と思って、改札を出てから「しまった!改札内にいればよかった…」と思った経験。私には何度もあります。

榛原駅はというと、ホームにベンチがたくさんあり、ここでパンやおにぎりくらいの軽食であれば食べられる雰囲気です(雰囲気は重要)。

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改札内からの眺め

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駅構内に宇陀市立図書館の返却ポストが。便利!

また、駅の改札を出てバス乗り場への階段を降りると、「じゆうだ」という観光案内所があります。

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観光案内所 じゆうだ

こちら、休憩スペースがあり、無料で利用できます。Wi-Fiが利用でき、飲食もできます。

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とても充実したサービス

飲み物や地元のパン屋さんのパンなども販売されており、こちらで簡単な昼ごはんを取りながら、ルチャ・リブロへのバスを待つのもいいかもしれません。

目の前がルチャリブロへ向かうバスのバス停です。

東吉野村役場行きのバスに乗車

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バスの時刻表は改定がありますので、
この画像の時刻を鵜吞みにせず、都度お調べください。

「東吉野村役場行き」のバスに乗ります。私は13時台のバスで向かいました。

ここで便利だと感じたのが、交通系ICカードが利用できること。PASMOで乗車ができました!

地方の路線バスは、現金のみの場合もあります。
普段、カードや電子マネー中心の生活をしていると、慌てることがありますよね。

初めての行き先だとバス料金も推測できず、高額紙幣は両替できないので困るケースがあるかと思います。

今回は「鷲家」というバス停で下車します。
バス代は片道900円程度かかりますので、余裕をもってチャージしておいた方がいいです。

スムーズに進みましたが、それでも40分ほど乗車していたでしょうか。
私が乗った日はみなさん降りてしまい、途中からバスのお客は私ひとり。
降り過ごしてしまったのでは……と途中、不安になりました(笑)。

でも、村の奥へ向かう路線といっても、川を渡ったり、道の駅のようなところの停留所に停まったり、風景にはかなり変化があり、乗車中もあきることはありませんでした。

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金鳥の看板と競り合う、鷲家のバス停

さて、鷲家で下車しますと、降りた地点の向かい側に、帰りのバス停(上写真)があります。分かりやすい!

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左が日の出林業の建物

降りた地点からそのまま、乗ってきたバスの進行方向と同じ方向に進み、橋を渡ります。
川を挟んで左側に、日の出林業の大きな建物がみえてきたら、そちらの方向でOKです。

そのまま道なりに進む(歩道などはないので車に気をつけて)と、間もなく「天誅組終焉の地」石碑が見えてきます。私が訪ねたときは、黄色いのぼりも立っていおり、にぎやかででした。

「天誅組終焉の地」の石碑

苔むした石碑

天誅組の祀られている史跡に向かうようにして、橋を渡ります。

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この橋を渡る

写真は明るめに写ってしまいましたが、史跡は昼間でもひとを寄せつけないような、薄暗く荘厳な雰囲気です。史跡を囲む樹木の大きさに圧倒されます。

奥が天誅組の史跡

橋を渡って左側の木立を抜けると、ルチャ・リブロに到着です!
開館日は看板が出ています。

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手描きの看板が、図書館の雰囲気とあっています

ルチャ・リブロと映画『PERFECT DAYS』の共通点

活字を追うひとときには、心を静める作用がある。

そういった理由から、読書の時間を設けている学校もあるそうです。

平日のルチャ・リブロには、気持ちのざわめきが凪ぐような、都心部とは違う時間が流れていました。

その空間を壊してしまうような気がして、室内ではシャッターが切れませんでした。館内の写真がなく、すみません。

ルチャ・リブロの館内で存在感を感じるのは、館内の両側にある、縁側やお庭に向かった大きな窓。
そして、そこから見える草木と木漏れ日です。

ルチャ・リブロで読書を楽しんでいるときに、ふと読書を休憩し、しばらく木漏れ日を眺めていたい、という思いに駆られました。

そのときに思い出したのが、去年見た、役所広司さん主演、Wim Wenders監督の映画『PERFECT DAYS』です。
ご覧になった方もたくさんいらっしゃると思いますが、ここには「木漏れ日」を映し出すシーンが何度も登場します。

PERFECT DAYS 公式サイト
https://www.perfectdays-movie.jp

映画を見た後、『PERFECT DAYS』関連のインタビューや特集記事などで「英語には”木漏れ日”にあたる表現がない」(※2)、ということを知りました。

植物そのものに注目するのではなく、葉っぱの間から漏れる「光」を楽しむ。
これは、日本的なものの見方なのだな、と感じたひともいたことと思います。

ルチャ・リブロは、木漏れ日を感じながら読書ができる、すばらしい空間です。

斬新で先進的な空間の公共図書館は、地方活性化の役割も与えられて全国に増えましたが、木漏れ日を愉しめる図書館は少なくなったように思います。
読書だけでなく、私は久しぶりに「何も考えず、ただ窓辺を眺める」という貴重な時間を過ごすことができました。

ルチャ・リブロへ行くことを迷っている方への回答は、もちろん、「遠いし時間もかかりますが、ぜひ行ってみてください」です。

<参考サイト>

※1
東吉野村webサイト
http://www.vill.higashiyoshino.nara.jp/moving/moving_news/people/lucha-libro

※2
木漏れ日は英語で?映画『PERFECT DAYS』で英会話
https://note.com/etc_eikaiwa/n/nfc22c7f81afb
 
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