カウンター業務は、図書館の仕事の「ごく一部」

2024/08/12

図書館員になりたい 本の周辺 本紹介

図書館の主な仕事としてイメージされるカウンター業務。実は、図書館業務のごく一部

今回の記事は、図書館の関係者だけでなく、たまに図書館を利用するような、一般の方にも読んでもらえたらと思い、書いています。

「図書館の仕事」と聞くと、みなさんはカウンターでの貸し出し業務をイメージするのではないでしょうか。

画像
このイメージです

図書館を「小説を借りるのに利用する」「子どもの絵本を借りるために利用する」というごく一般的なユーザーの方、もしくは「学生時代は自習で使ったけど、大人になってから全く図書館に行っていない」という方に、図書館員の仕事のイメージってどんな感じですか?と訊いてみると、

「受付で、本をピッピしているひと(≒本のバーコードの読み取りをしている)」

と答えてくださることが多いです。

この作業、図書館では「カウンター業務」という作業の一部です。

カウンター業務は、図書館の入り口にある受付カウンターで、本の貸出や返却、予約や取り寄せをしていた本の受け渡しを行なう業務のこと。

私は10代のころから公共図書館のヘビーユーザーだったため、図書館の仕事は一般の利用者よりもよく知っているつもりでしたが、そんな私でも、図書館員になるまでは「カウンター業務」が図書館員のメインの仕事だと思っていました。

考えが改められたのは、その後、司書資格取得のために勉強を始めたことがきっかけでした。

話を元に戻しますと、利用者の目に最もとまりやすい「カウンター業務」は、実は図書館業務のごく一部です。

図書館の規模によってカウンター業務のウェイトは変わってきますのでひとくくりには言えないのですが、市や県など規模の大きな公共図書館や大学図書館では、どちらかというと「メインの仕事」ではない、と言い切っていいのではないかと思います。

ライターの仕事は「執筆作業以外の仕事が大半」

「ユーザー目線ではその職種のメイン業務(作業)だと思っていたことが、実際は違っていた」

こういったことは、他業種でもしばしばみられますよね。

例えば、ライターの佐藤友美さんは著書『書く仕事がしたい』の中で、こうおっしゃっています。

意外かもしれませんが、ライターの仕事のうち、実際に「書いている」時間は、実はそこまで多くはありません。
これは、どんな分野のライターをするかにもよるのですが、私がファッション誌のライターをしていた時代は、実際にパソコンに向かって書いている時間は、仕事の2割くらいでした。(p.80より) 

加えて、この本の帯には「書いて生きるには文章力”以外”の技術が8割」と書かれています。

ライターさんのお仕事、というと、インタビューや取材の時間はあるものの、ほとんどの時間を執筆に費やしているだろう、とみなさん思っておられるのではないでしょうか。

しかし、ライターさんの業務をもっと細かくイメージしてみると、実際の執筆作業に取り掛かるまでの段取りや、アポ取り、取材までの下準備や打ち合わせ(インタビュイーに著作があればそれを読む)、持ち込み企画の準備、など、裏方的な作業がたくさんあることに気がつきます。

ドラマや映画などのイメージで世間一般の人が思い浮かべるライターの姿は、あくまで一般人の想像でしかないんだな、と思えてきます。

カウンター業務以外の図書館員の仕事とは?

図書館に話を戻しましょう。

皆さんがイメージする、本をバーコードで読み取る「カウンター業務」以外に、図書館にはどんな仕事があるのか、その一部をご紹介します。

資料の整理に関する業務

  • 書架整理
    開架(利用者の皆さんが手にとれる場所にある本棚のこと)に本が順番通り並んでいるかチェックする。

  • 蔵書点検
    多くの図書館には「書庫」という、開架に置ききれない本をしまったり、貴重な本や過去の新聞/雑誌などを保管している、バックヤードがある。
    開架の本もふくめて、図書館の所蔵している資料全体が紛失していないか、正しい場所にあるかを点検する作業。

  • 本の修理

  • 配架
    返却された資料を元の場所へ戻す作業

  • 企画展示(図書館の資料をテーマごとに並べること)
    ポスターをつくって告知するような大きな展示から、季節ごとのテーマなどで図書館の一角に本を並べる、一般の書店のような展示まで、さまざまな規模のものがある。
    作家さんの訃報があると、その方の著作を集めて追悼展示を行うのが一般的。

  • 館内清掃
    トイレの清掃は業務委託していても、閲覧席や本棚のホコリとりなどのそうじは図書館員が自らやっていることがほとんど。

本のラインナップを整えることに関する業務

  • 選書
    日々たくさん出版される本の中から、どの本を図書館で受入(※)するか、検討する作業。

  • 資料の発注・納品
    選書の結果、必要となった資料を書店や古書店に発注し納品してもらうまでの業務。

  • 購入資料の受入
    納品された図書を検品し、書誌(※)を作って図書システムへデータを登録し、バーコードや背ラベルを貼って貸出できる状態に整えるまでの業務。

  • 寄贈資料の受入
    まず、自館(その図書館)で受入するかを判断し、その後は購入資料と同じような作業が発生する。現代の本とは違う形の資料(和綴じの本や巻物など)の場合は、受入の工程が複雑になる。
※受入:
ある資料をその図書館のラインナップに加えること。つまり、その図書館の所蔵資料とすること。およびそれにまつわる作業のこと。

※書誌:
その資料が「その本」だと特定するための情報のリスト。項目には、タイトルや著者、出版社、出版年、第何版か、などがある。

カウンターに関する業務

  • 調査相談(レファレンス業務)
    利用者からのあらゆる相談に応じ、図書館員が調べ物をして対応をする。
    ↓「レファレンスサービス」についてはこの記事でも触れています
  • 本の貸出・返却(←いわゆる「カウンター業務」)

  • 複写(コピー機の利用)への対応

  • 他館から取り寄せた資料を貸出できるようにする作業/他館から借りていた資料を返却する作業

  • 利用者から予約や取り置きの依頼があった資料を棚から集めて確保する作業

  • 図書館見学者への対応

  • 予約やリクエストの受付

  • 督促
    返却が滞っている資料の督促。カウンターではなく事務室などのバックヤードで行う。

  • 移動図書館(本を積んだ車が図書館から離れた地域を回るサービス)の運営

イベントに関する業務

  • 大人向けの図書館イベントや講演会などの企画・運営・広報
  • 子ども向けのおはなし会や絵本の読み聞かせなどの企画・運営・広報
  • これらの資料やポスターの作成

ざっと上げるとこのような感じです。

図書館の種類(館種)と規模によってかなり変わってくるので、これは一例だと思っていただけたら幸いです。

館種によっては、ここにはない業務が加わる場合もあります。

図書館を普段利用しない方やインフルエンサーさんに、この記事を読んでもらえたら、うれしい

図書館のひとって、本のバーコードをピッピしているだけなんじゃないの?

コンビニにもセルフレジがあるんだから、図書館の仕事も無人化できるんじゃないの?

そんな風に思っておられるた方もいらっしゃると思いますが、「図書館の仕事は無人では成り立たなさそうだぞ……」、ということをなんとなく感じてもらえたら、うれしく思います。

図書館の業務内容を紹介したサイトは、いくつか存在するようです。

例えばこちら↓
図書館の仕事は7つに分けられる! 司書資格の必要性と注意点を解説

ですが、「図書館員になりたい!」と就活している方々にしか、こういった情報は知られていないような気がしていました。

そのため、他のネット情報と重複した内容も含まれているかもしれませんが、あらためて紹介した次第です。

特に今回の記事はインフルエンサーの方にも読んでもらえたらうれしく思っています(この記事自体がインフルエンサーの方々の目には留まらないかもしれませんが)。

理由は、いわゆる「インフルエンサー」と呼ばれる、ネットやSNS上で影響力がある方々は、本を出版している方も多く、書店や出版業の内情にはお詳しいのですが、図書館のことはあまりご存じない方が多いように感じたためです。

私が継続的に発信をチェックしているインフルエンサーは少ないのですが、発信を見ていると、図書館については「無料で本が借りれる、不要になった本を寄贈できる」という知識まではお持ちの方が多いものの、図書館についてそれ以上のことはなかなかご存じないようでした。

それはインフルエンサーの方々の責任ではありません。

ひとえに、図書館側の広報不足が原因です。

一般の方に図書館のサービスを紹介したり、イベントの広報をしてこなかったからで、完全に図書館側の責任だと私は感じています。

インフルエンサーの方々は、常に発信をしているという立場から、総じて読書家な印象です。ご自身のインプットのために、書店と同じように図書館ももっと活用してもらいたい!と思っています。

本好きだけど、図書館をあまり利用しないという「書店派」の方々や、図書館にはこれまで興味がなかった、という方にこの記事が届くとうれしいです。

次に誰かと図書館を訪れた際には、「このひとたちって、こういうこともしてるんだよ!」と、同行者に自慢してみてくださいね。

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