こんなところにも図書館が。
今回は本に興味のある方にも、そうでない方にも、読んでもらえたらいいなと思っている記事です。
これまでも図書館の仕事は、カウンターでバーコードを読み取るだけではないんですよ、という記事を書いてきているのですが、
今回は、「え!こんなところにも図書館がかかわってるの⁈」という例をご紹介したいと思います!
みなさんは、NHKの「ファミリーヒストリー」という番組はご存知でしょうか?
俳優さんや芸人さんが自分のルーツを調べてもらい、それを関係者へのインタビューなども交えながら放送する、ドキュメンタリー仕立ての番組です。
現在は月一回〜二回ほど放送されているようです。
依頼した本人も司会者と一緒に、出来上がったVTRをその場ではじめてみるようなので、感極まり涙ぐむ依頼者も多いですよね。
ある俳優さんはこの番組に出演した際「自分のルーツを知ったことで、これからの自分の演技も変わると思います」と力強くおっしゃっていました。
その際、普段のインタビューなどでは見かけたことのない、とても神妙な顔つきをされていたことが印象に残っています。
演技経験のない私が言うのも偉そうなのですが、その後、その俳優さんは大きく成長されたように感じています。
出演した方のその後の芸能人生に大きな影響を与える、ユニークな番組だなあと思います。
一方で、番組一本を作るために、大変な労力がかけられているということも伝わってきます。
「そんなひとまで探しあてたんかい!」とか「そこまで調べたの⁈」と、毎回驚かされているのは私だけではないでしょう。
この番組は2008年に始まり、現時点での最新放送は222回目(鈴木砂羽さんの回。情報は「ファミリーヒストリー」のWikipedia参照)。この220回以上の放送において、文書館や博物館、教育委員会などと並んで、(すべての回ではありませんが)ほぼ毎回のように、調査の協力や資料提供をしている施設。
それが図書館です、と聞いたら驚くでしょうか?
「ファミリーヒストリー」大泉洋さんの回を辿ってみる
では、実際の番組を参考に、図書館が番組にどのようにかかわっているか、辿ってみましょう。
昨年末(2024.12.29)に放送された「ファミリーヒストリー」の大泉洋さんの回を例にします。
「大泉洋 ~北の大地に希望を託して~」放送概要https://www.nhk.jp/p/famihis/ts/57RY735RG4/blog/bl/pQEWnkenBO/bp/p6gEwYvM5q
ファミリーヒストリーでは、最初に戸籍謄本や家系図から調査をスタートすることが多いようです。
大泉さんの回は、戸籍に載っている最も古い情報をもとに、調査が始まりました。
1.市立小樽図書館
大泉さんの回で最初に登場する図書館は、市立小樽図書館。
https://www.otaru-lib.jp/index.html
大泉さんの父方のルーツを辿っていたところ、市立小樽図書館に所蔵されていた『小樽便覧』(明治39年)という資料に、大泉さんの曽祖父がかかわっていた「大泉執達吏役場」の記録が残っていました。
執達吏というのは、「執行官の旧称。もと、区裁判所に配置され、強制執行や裁判文書の送達などを行なった役人」(※1)とのことで、裁判所の文書の送付などを行なうひとのようです。
参照していた資料を小樽図書館の蔵書検索(OPAC)で探してみました。
もしかしたらこちらかもしれません(放送時の情報をもとに検索しただけなので、100%確実という保証はありません)。
2.ハワイ大学マノア校図書館
次に登場した図書館は、なんと海外の図書館。
大泉さんの母方の祖母、シズコさんがハワイ育ち。
そのため、取材班はハワイの大学図書館まで訪れていました!
取材で訪れていたのは、ハワイ大学マノア校。
マノア校には二つ図書館があるようで(※2)、番組VTRの情報だけでは、どちらの図書館を訪ねたのか特定はできませんでした。
この図書館には日本研究の専門司書がおり、日本からの移民に関する資料がたくさん保管されているようです。
番組では、図書館に保管されていた当時の住宅地図から、祖父母が出会ったきっかけを推察していました。
https://manoa.hawaii.edu/library/
3.愛媛県立図書館
次に登場した図書館は、愛媛県立図書館。
大泉さんの母方の祖父、泰(ゆたか)さんの足跡を辿るため、取材班が訪ねた場所です。
https://lib.ehimetosyokan.jp/
泰さんは、伊予鉄道電気株式会社(※3)という、電力会社で働いていました。
それを示す資料として、伊予鉄道電気の社内報である『社友』(昭和4年3月)が紹介されました。ここに泰さんの名前が!
昭和4年=1929年ですので、番組で紹介された資料は下記ではないかと思います(郷土資料のため、貸出はできない資料です)。
『社友』第34~37,41~46,48~51,54~58,60号
伊予鉄道電気株式会社社友会 -- 1927~1930
https://www.ehimetosyokan.jp/winj/opac/switch-detail.do?idx=13
4.国立国会図書館
そして、エンドロールに登場するのが、国立国会図書館です。
https://lib.ehimetosyokan.jp/
「〇〇市立図書館」や「〇〇町立図書館」は、市や町が運営している図書館であるのに対し、国会図書館は国立の図書館です。
膨大な資料が保管されています。
NHKの「ファミリーヒストリー」からわかる「外から見えづらい図書館の仕事」
いかがだったでしょうか?
こういった調査依頼に協力するのも、図書館員の仕事です。
そして、調査依頼があった際に速やかに取り出せるよう、整理や保存、必要であれば修理をするのも、図書館員の仕事。
また、こういう問い合わせに対応できるように、地域資料をこつこつ収集するのも、図書館員の仕事なのです。
図書館を利用する立場だと、「新着図書コーナー」にならぶ新しい本や、今話題のビジネス書や小説、エッセイなどが目にとまってしまいます。
図書館が過去の出来事やルーツ探しのお手伝いなどの歴史調査やそれに関する資料提供をしているっていうことは、外からは見えにくいですよね。
今回の記事をきっかけに、みなさんの図書館司書のイメージが大きく変化したら、とってもうれしいです。
<参考サイト>
※1
コトバンクより
https://kotobank.jp/word/%E5%9F%B7%E9%81%94%E5%90%8F-521535
※2
ハワイ大学マノア校図書館訪問記 山口大学附属図書館報
http://www.lib.yamaguchi-u.ac.jp/lib-nws/be-69/69.5-6.pdf
※3
伊予鉄が電力会社!? 伊予鉄公式ブログ
https://iyotetsublog.com/2022/12/02/post-3817
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