【追悼】帯文から伝わる、谷川俊太郎さんのまなざし(大人におすすめの絵本シリーズ)

2024/11/28

本紹介

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訃報 谷川俊太郎さん

日本を代表する詩人の谷川俊太郎さんが今月13日亡くなりました。92歳でした。

多くの公共図書館では、作家などの訃報を受けると、自館の所蔵を調べ(その方の本を所蔵しているか調べる)、著作を集めた本の企画展示(追悼展示)を行います。

今、図書館や書店へ行くと、谷川さんの詩集や絵本、エッセイなどには出会えると思いますので、当ブログでは本という形態では出版されていない谷川さんの文章を紹介することにしました。

『地球の上に生きる』は大人向けの絵本

アリシア・ベイ=ローレルさんが絵と文を書いた『地球の上に生きる』(草思社, 1972)。

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実はこの本の帯に谷川さんが文章を寄せているのです。

本の作者はコミューンで暮らす、いわゆるヒッピーです。

この本には電化製品や既製品に頼らず、生活に必要なほとんどのものを自分で作り出す方法が紹介されており、すぐに項目を引けるよう、巻末に索引までついています。

活字でなく文章が手書きであることや、味のあるイラストがふんだんに使われていることから、大人のための絵本という感覚で読んでいます。

この本を「大人のための絵本」としたもうひとつの理由は、日常とは全く別の世界へ連れて行ってくれるから。

サバイバル術が書かれているこのような本の場合、掲載情報が正しいかどうか、また、最新情報かどうか、という実用性が重視されるのが普通でしょう。

この本をそのような観点で評価すると、出版されたのは半世紀も前のため、情報は古く、必ずしも正しい情報ばかりが載っているとは言いきれません。

一例をあげると、この本に載っている、一人でのお産や山登りにジーパンをはいていく話などは、出産も本格的な登山も経験していない私が読んでも、危ないのではないかと思いました(笑)。

情報の有用性や正確さという視点でこの本を見てしまうと、確かに突っ込みどころ満載で、実用性はあまりないかもしれません。

ですが、この本の価値はそれとは違うところにあると思っています。

ページをめくると、日常の制約から切り離され、私たちも、もともとは自然に生きる動物の仲間だったのだ、ということに思いをはせることができ、心が自由になるのです。

アリシアは、生きる技術を自分の忘備録として、淡々と項目をメモしていっただけだったのかもしれません。

ですが、この本を読み始めると一分もしないうちに、日常とはまったく異なる時間の流れに放り出されます。

そして、既製品だらけの私たちの生活が、いかに自然とかけ離れ、いびつなものになってしまっているかということを思い知らされるのです。

私にはアウトドアの趣味はありませんが、もしかしたら、登山やキャンプや渓流釣りなどを趣味にしている方は、趣味の時間を過ごす度にこういった気持ちを味わい、リフレッシュしているのかもしれない。

そんなことを感じながら読んでいます。

何かを作る工程が書かれた絵本が好きな私は、この本を気まぐれにめくったところから読むのをとても楽しみにしています。

谷川さんの帯文から伝わる本の魅力

最後に、本の帯に記されている谷川さんのことばをご紹介します。

この本にしるされたことを、かたっぱしから自分の手で試したい。

せめて試すことを夢見たい。

それだけでも私の人生は、きっと根本から変わるだろう

この短い文章からアリシアの本がもつ、魅力が十分伝わってくるのではないでしょうか。

谷川さんは詩集やエッセイ、絵本などの出版物の形をしたものばかりではなく、校歌もたくさん書かれたのだそうです(※)。

亡くなられた後も、さまざまところで谷川さんの言葉に出会うひとがいて、衝撃を受けたり、励まされたり勇気づけられたりしていくのでしょう。

最後になりましたが、谷川さんのご冥福を心よりお祈りいたします。

<参考URL>

※谷川俊太郎さん、各地で校歌の作詞も…「このフレーズは教育の原点」大分県の高校「歌い継いでいこう」https://news.yahoo.co.jp/articles/a9b4ff07b76ed1149ae19f47d7dfe7047af2a679

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