ゴミ拾いを「スポーツ」に変える!異分野のヒントが課題を解決する(NHKの「みみより!解説」からのピックアップ)

2026/06/08

好奇心

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こんにちは。

私は普段、家事の合間にNHKの「みみより!解説」をよく視聴しています。10分足らずの短い番組ですが、ハッとさせられる視点が多くて大好きな番組です。

前回は「みみより!解説」についてさらっとご紹介させていただきました。

前回の記事 >> 知っている人は知っている。NHKの平日お昼のプチ番組とは?

NHK解説委員室の関わっている番組は、過去の放送内容がテキスト化されていることが多く、見逃してしまってもテキストで放送内容を確認することができるのがありがたいです。
「みみより!解説」もテキストになっています。

先日(といっても3月5日)、「スポーツで街をきれいに」というテーマが取り上げられていました。一見すると「環境問題」の話のように見えるのですが、ビジネスやコミュニティ運営、さらには個人の生き方にまで通じる「課題解決のヒント」が詰まっていました。

今回は、番組の内容を振り返りながら、私の専門である図書館や、キャリアの視点から深掘りしてみたいと思います。

2026年3月5日放送回「スポーツで街をきれいに」

「スポーツで街をきれいに」

初回放送日 NHK総合テレビジョン3月5日(木)午後0:20

放送内容をテキスト化したものはこちら
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015068001000

ごみ拾いにスポーツの要素を取り入れて街をきれいにしていこうという動きが広がっています。

この放送では、街のゴミ拾いにスポーツの持つ「競技性」を取り入れ、楽しみながら健康的におこなう社会奉仕活動について紹介されていました。

放送概要

ゴミ拾いをスポーツ化「スポGOMI」

ゴミ拾いはスポーツだ!を合言葉にゴミ拾いをスポーツにした取り組みです。

決められたエリアのゴミをチームを組んで拾い、その量や種類に応じたポイントで勝敗を競います。

去年2025年は、海岸やショッピングモール周辺で全国289大会が開かれ、延べ約2万8000人が参加。参加費は無料。

新規の開催については、一般財団法人 日本財団スポGOMI連盟 Official Siteに開催案内が掲載されていますので、興味のある方はぜひチェックを。

放送では「スポGOMI in 両国国技館」の模様が流れました。

スポGOMIの方によると「両国の街はゴミが少ない」とのことでしたが、優勝チームは7.97キロもゴミを拾っていました。

参加した29チームが集めたゴミの総量は65.09キロ!

以下、参加者の声です。

「思わず本気になってしまった」「めちゃくちゃ楽しかった。もっと時間が欲しかった」

長年、海洋ゴミの研究を続け、スポGOMIの取り組みにも関わってきた、九州大学大学院工学研究院 清野聡子准教授が「これまでのゴミ拾いは正義感で参加する人が多く、なかなか参加数が増えなかった。スポGOMIは環境に興味がなくても、『競技やチームワークを楽しみたい』という、これまでとは違う層の人たちをゴミ拾いの世界に引き込んだことに大きな意義がある」とおっしゃっていたのが印象的でした。

プロギング

これはジョギングをしながらゴミを拾う活動で、2016年にスウェーデン人のアスリートが始めたフィットネスです。
今では世界100カ国以上で親しまれ、日本では現在全国に130のプロギング団体があるそうです。

イベント時は20人前後でチームを組みます。ゴミを拾った人には「ナイス!」と声をかけてほめあうことになっています。

かがんでゴミを拾うからでしょうか?なんと、通常のジョギングの1.2倍のカロリーを消費するというから驚きです。

レースプロッガー

各地のマラソン大会でランナーの最後尾付近でプロギングをしてランナーを励ましながら走る役割を担っているひとたちのことを「レースプロッガー」といいます。

現在、レースプロッガーをされている方の中には、長年ランナーとして自己ベスト更新を目標としてきたけれども年齢を重ねることでなかなか記録が伸びなくなった中、プロギングと出会い、「自分の培ってきたスキルが誰かのためになる」ということが新たな目標になったという、ランナーもいらっしゃるのだそうです。

①「楽しそう!」という気持ちで参加したら、社会課題の解決に貢献できていた

ここからは私の感想です。

スポGOMIとプロギング、このふたつに共通点があるとしたら、「なんだか楽しそうだから気軽に参加してみたら、知らないうちに社会課題の解決に貢献できていた」、という点だと思いました。

参加者のきっかけは「楽しそうだし、運動にもなりそう!」という軽い気持ちだったかもしれません。
ですがその結果、参加者は「楽しかった!」だけではない充足感を持ち帰っています。

例えば、今回の「ゴミ問題」はSDGsにも関わる、長期的な取り組みが必要な課題ですが、解決の兆しが見えにくい問題です。

今回のゴミ拾いは街や海辺などの清掃であり、ゴミの埋立地問題に直接関係の深い「家庭ゴミ」の問題とはまた別ではあるのですが、家庭ゴミに目を向けると、実はこのままでは日本のゴミの埋立地(※1)はあと20年で満杯になってしまう、といわれています(※2)。

私(40代)が年金生活に入ったころには、今のような感覚ではゴミを廃棄できなくなっている、ということです。

地域によっては埋立地がなくなってしまい、ゴミの回収そのものができないところも出てくるかもしれません。定期的なゴミ収集が減らされることで、身体が不自由な高齢者などがゴミを出しにくくなり、ゴミ屋敷のような住宅が増加する可能性もあります。

今回の「スポGOMI」に代表される考え方は、「スポーツ」という枠組みを取り入れることによって、ゴミ問題だけでなく、解決が難しい社会課題や、高齢化や人口減少にともなう地域の問題にも応用できるのではないか、と希望を感じました。

②「正義感」より「楽しさ」が世界を変える

二点目も似ているのですが「ゴミ拾い」という、慈善活動色の強い取り組みを遊び(スポーツ)にしてしまった、という発想の転換に驚きました。

私の職業である司書もふくめ、公共性が高く、社会の役に立つことをしている(公共図書館の存在意義はこちらの記事へ)という意識が強い職種のひとは、基本、生真面目なひとが多いです。
そのため、問題意識を持ってもらったり、聞き手の正義感や道徳心に訴えかけたり、いわゆる「真正面」からのアプローチでなんとかひとを動かそうとしてしまいがちなんです。
学級委員的アプローチといったら、伝わるかなあ。

たしかに、世の中の人みんなが元学級委員や優等生であれば、そのアプローチでみんな動くと思います。
しかし、現実はそうではありませんよね。
世の中の大半のひとは学級委員でもなく、優等生でもありませんから、こういった正攻法のやり方では、ひとは動きません。

そのため、これまでの街の清掃には、慈善活動や地域活動、社会問題への意識が高い人たちが中心だったり、地元企業や地元のスポーツクラブ(サッカーやバスケチームなど)がイメージアップのために参加する、というケースが多かったのではないかと思います。

しかし、この正攻法だと、いかにも真面目そうなひとたちばかりが集まってしまうことが想像できます。
地域の清掃活動に興味があるひとの中には「自分と気の合う人はいないかもなあ」と思って、参加を見送ってきたひともいたのではないでしょうか。

上記の繰り返しとなりますが、非常に印象的だったのが、九州大学の清野聡子准教授の言葉「これまでのゴミ拾いは正義感で参加する人が多かったが、スポGOMIは環境に興味がなくても『競技を楽しみたい』という層を巻き込んだ」です。

ゴミ拾いを「正しいからやる」のではなく「楽しいからやる」というものに変えた点は大変大きいと思います。

実は現在、スポーツだけでなく、アートやゲーミフィケーションといった分野で、身近な問題や社会課題を解決しようとする動きが広まりつつあります。

アートの力/アートと異分野との融合により社会的課題の解決を図る(東京藝術大学のとりくみ)
https://www.janu.jp/report/feature-archive/77ch2/

ゲーミフィケーション:
これはコンピュータゲームのゲームデザイン要素やゲームの原則をゲーム以外の物事に応用するという考え方。
経済産業省の調査では、個人の日常の課題から社会課題まで様々な課題を解決できる可能性を持っていることが報告されています(※3)。

スポーツについても、アートやゲーミフィケーションのように社会課題の解決への応用が期待できそうですし、こうしたことが停滞した状況を打破する鍵になりそうだと思いました。

③ミッドライフクライシスを乗り越えるきっかけにも

いきなりですが「ミッドライフクライシス(中年の危機)」という言葉をみなさんは耳にしたことはありますか?
一般的には、主に40~50代が陥る心の不調のことを指します。

体力の低下や仕事・子育てなどライフステージの変化によって、悩みや焦りを抱えることが増え、「このままでいいのか」という不安や焦り、虚無感などを感じる心理状態になることから、「第二の思春期」とも呼ばれることもあるようです。

この年代は、プレイヤーの立場から第一線を退き、指導や教育的役割への変化を求められる時期とも重なります。

この「新しい役割」へのシフトがうまくいかなった場合に、無気力やモチベーション低下などの心の不調として現れるようです。

ここで注目したいのが、ランナーの最後尾付近でプロギングをしてランナーを励ましながら走る「レースプロッガー」のコメントです。
彼らの中には、プレイヤーとしての自己ベスト更新が難しくなったベテランランナーも多いということでした。

自分の能力を右肩上がりに更新し続けるのが難しくなったランナーが、レースプロッガーになることで「自分のスキルや経験を次の世代のために使う」という、新たな役割を見つけることができたのです。

ゴミ拾いから始まったプロギングというスポーツが、実はミッドライフクライシスへの対処に役立っているという事実は、大変興味深いです。

ハードルを下げるということ

この番組を見て、私がフリーランスの司書として取り組んできたこととの共通点に気づきました。

それは、読書人口を新たに増やすためのアプローチに関してです。

図書館で働いていた時、図書館は「本が好きな人」だけの場所になりがちですが、私はもっと違う層——読書が苦手な方や、図書館に縁がなかった方——に来てほしいと考えてきました。

そのため独立後に企画したのが、他の読書会ではNGとするような「資格試験の勉強や問題集を読んでもOK」「(普通の読書会は本の話題を交流時間に話すのが前提だが)交流時間においても必ずしも本の話題をださなくてもいい」という、参加ハードルの低い読書イベント「デジタルデトックス読書会」です。

「スポGOMI」がゴミ拾いのハードルを下げたように、私も読書会という場の定義を少しずらすことで、読書会や読書イベントに新しい風を送り込みたい。

そんな思いが改めて強くなりました。

最後に:解決のヒントは「全く関係ない分野」に存在する

今回の「ゴミ拾い×スポーツ」のように、直面している課題を解決するヒントは、往々にして全く関係のない分野に転がっています。

それが課題解決というものの難しさでもあり、近年、企業が職歴も専門性も多様な人材を集めようとしている理由でもあると思います。

多くのテーマの中から、「ゴミ拾い」と「スポーツ」を結びつけるような、意外な視点を持った本や事例を提案できるのが、私たち司書の強みです。

ビジネスや社会課題のヒントを探している方は、ぜひ「知のコンシェルジュ」として図書館や図書館司書をフル活用してみてくださいね(もちろん、私に気軽にお尋ねいただいても結構です!)

<参考サイト>
※1
埋立地:
再利用や再資源化が難しいゴミを処分するために、ゴミが集められる施設のこと。「ゴミ埋立地」「最終処分場」と言われる。

※2
20年後、埋立地が使用不可になりゴミを受け入れられない!? 解決のためにできること
https://sdgs.yahoo.co.jp/featured/82.html

※3
経済産業省「令和5年度地域デジタル人材育成・確保推進事業(ゲーミフィケーションを活用した人材育成等に関する調査事業)」に関する報告書を公表しました
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/2024_gamification-jinzaiikusei.html

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