【イベントレポート】「本屋で読者が本を売る」に売り手として出場いたしました!

2025/12/02

イベント 本紹介

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手前は待ち時間に読んでもらおうと思って持参したZineやフリーペーパーなど。奥が紹介させていただいた5冊。

イベント「本を読めなくなった人のためのお茶会」でお世話になっている奈良市の本屋さん、ほんの入り口さんでのイベント、「本屋で読者が本を売る」に出させていただきました。

今回は、そのレポートです。

イベント概要

本屋で本屋が本を売るのは当たり前ですが、本屋で読者が本を売る、というのはなかなかに珍しいのではないでしょうか。「一箱古本市」という、南陀楼綾繁さんの始めた画期的なスタイルはなるほど、「読者が本を売る」の先駆けでした。「本屋で読者が本を売る」は読者が蔵書を販売するという形ではなく、読んでよかった本の素晴らしさを店頭で「売る」という試みです。

ほんの入り口さんイベントお知らせ記事より)

■本屋で読者が本を売る

10月11日(土)14時〜16時

参加費無料、申し込み不要、出入り自由。

このイベントは上の説明文にもありますように、自分の蔵書(古本)を売るのではなく、ほんの入り口さんで扱っておられたり入荷可能な新刊本(≒新品の本)を、店主の服部さんの代わりに、お客(今回は私)が売り手となり、来店された方にプレゼンして売る、という大変ユニークなもの。

これまで3名の方が本がこのイベントに本の売り手として出場しており、私は4人目とのこと。緊張……。

ビジネスパーソンのための、視野が広がる5冊

司書という職業柄、ひとに本を薦めたり、紹介することがわりとあります。

また、仕事で本を紹介したり、本を紹介する文章や発信もしてきました。

そのため、何もテーマがないと、本の選択肢がかなり広がってしまうため、勝手にお題(「選書テーマ」ともいう)を決めさせていただくことにしました。

お題は「ビジネスパーソンのための、視野が広がる5冊」。下記が当日ご紹介させていただいた本です。

網野善彦『古文書返却の旅 戦後史学史の一齣』

伊藤洋志、pha『フルサトをつくる』

アン・ウォームズリー、向井和美(訳)『プリズン・ブック・クラブ――コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』

水島広子、細川貂々『やっぱり、それでいい:人の話を聞くストレスが自分の癒しに変わる方法』

石川直樹『いま生きているという冒険』

もし、気になる本がございましたら、奈良市近郊にお住まいの方はぜひほんの入り口さんでのご購入をご検討ください!(店頭になくても取り寄せてもらえる場合があります)

当日のようす

当日は4名の方にご参加いただき、2名ずつでお聞きいただきました。

事前申し込み不要のイベントのため、服部さんより依頼を受けたときは「デパートの実演販売」のような感じで、来店されたお客様を捕まえて……、という動きを想定しておりました。

しかし、5冊それぞれに選んだ理由や紹介する上でのストーリーがあり、また、私自身が司書として大切に思っていることもできれば聞いていただきたい…という思いが出てきて、選んだ5冊をプレゼンのように紹介することになりました。

そして、5冊のプレゼンに、なんと小1時間もかかってしまったのです!軽いトークイベント状態です。

ほんと、お聞きいただいた方々には感謝しかありません。

改めて振り返ると、本の紹介やレビューをいろいろなところでやってきた、いわば「本の語り手」側の人間にとっては、「5冊」というのはいささかボリューミーだったのかもしれません。

1冊あたり5分で紹介したとしても、5分×5冊=25分、と軽く30分はかかってしまいます。

実際、すごく思い入れのある本を紹介するのには、5分って短いですよね。

これにプラスして、司書としてのスタンスや、今回の選書の意図、想定したターゲット像についてもぺちゃくちゃ話してしまいましたので、そりゃ、1時間ちかくかかるはずですよね……。

もしかしたら、今後、何か編集を加えて、音声配信するかもしれません。コアなキュリアスガーデンファンの方は、お楽しみに。

お客様のご感想「ターゲット設定が面白い」

当日はアンケートを実施させていただきましたが、掲載の許可はとっておりませんので、イベント中に出たお話から、印象に残ったものを紹介させていただきます。

このイベントでは、お題(選書テーマ)だけでなく想定しているビジネスパーソンのイメージもなんとなく決めていました。

というのも、「ビジネスパーソン」といっても、会社勤めしている方はみんなあてはまってしまうため、設定として広すぎるようにように思ったから。

また、自分自身、選書したり本をお勧めする場合は、そのひとが本を手に取っているシーンが映像として思い浮かべられないと、なかなか本をセレクトできないんですよね……。

こういった理由から、ビジネスパーソンの中でも、こんな方にこの5冊をお届けしたいです!と、勝手に設定させていただいたのがこちら。

ちなみに、お題をもう一度申し上げますと「ビジネスパーソンのための、視野が広がる5冊」です。

Aさん(仮)

【状況】普段、書店のビジネスパーソン向けのコーナーはチェックしているが、なかなかそれ以外の場所に置かれている本とは出会えない。

【心の声】書店のビジネスパーソン向けの本棚には置かれていないような本で、後々、仕事に効いてくるような本ってない?

Bさん(仮)

【状況】仕事に関する本ばかり読んでいて、読書傾向がマンネリ化してきてしまった。

【心の声】仕事以外の分野の本で、世界が広がるような読書がしたい!(でも、失敗したくない)

本のプレゼン時にこういったこともご紹介したところ、笑いが取れました(実は、本が売れるよりもうれしかったりして……)。

また、「AさんやBさんのような状況の方が知り合いにいるので、その方に今日の本をおすすめしてみたくなった!」という感想もいただき、心でガッツポーズいたしました。

例え既読本であっても

また、今回、自分自身にとって大きな学びだったのは、「既にお読みの本がラインナップに含まれていたとしても、それは必ずしも失敗ではない」ということでした。

これについて少し説明したいと思います。

本を紹介するような場面(選書、イベントでの紹介、文章でのブックレビューなど)において、紹介者にとって気になるのは、紹介する本がかぶっていないか、ということではないでしょうか。

「かぶる」というのは、同時期にいろいろなメディアで紹介されている、とか、これまでブログやSNSなどでたくさんのひとが紹介してきている、という意味も含みますが、一番恐れているのは「お客様が既に読んでいる」という状況です。

この10年ほど、本選びを代行する「選書サービス」というものが少しずつ広まってきました。本好きの方の中には、一度は利用されたことがあるひともいらっしゃるのではないでしょうか。

この、選書サービスのキャンセルポリシーなどに目を通すと、選書する側は、お客様が既に読んでいる本をおすすめしてしまわないように、かなり注意を払っていることが伝わってきます。中には、選書した本のラインナップに既に読んだことのある本が含まれていたら、その本は返品を承ります、というものまであります。

しかし、あまりにも「お客様が読んだことのある本を選ばないようにしなきゃ」という点にこだわってしまうと、選書が意図しない方向に向かってしまうのでは、と私は思っています。

意図しない方向とは、「過度にマニアックな方向」と言い換えてもいいかもしれません。

というのも、流通していて今現在手に入る新刊の中で、かつ、ストライクゾーンを外さない本(多くの人が面白いと感じてくれる本)って、実はそんなには多くはない、と考えているからです。

みんながいいと言っている本は、やっぱり、本当にいい。

やはり、私たちは日本という国に長く住んでいて、似たような価値観を持っていますし、多くの人に響く本には共通点があるように思います。

「お客様の既読本と被らないように」というところに注意を向けてすぎて選書してしまうと、「いかにお客様が知らない本を紹介するか」というところに軸足が移ってしまって、本来の選書サービスの目的から外れてしまうように思うのです。

こういったことは、ビブリオバトルや、参加者が本を持ち寄って紹介する形式の読書会でもおこりがちで、「他の参加者の知らない本をいかに紹介できるか」を競う場になってしまわないよう、主催者は注意や工夫が必要です(こちらについてはまた別の記事でお話ししたいと思います)。

話を今回のイベントに戻しますと、ご参加の方の中に、「5冊のラインナップの中に、読了している本がある」という方がいらっしゃいました。

ですが、その方は「進地がその本についてどんな感想を持ち、どう紹介するのかを聞きたくて参加した」とおっしゃってくださったのです。

紹介する本の中に例え「かぶっている本」があったとしても、「他の人はどう読むのかな?」ということを楽しんでもらえる。

これは大きな気づきでした。

これまで、web記事やSNSや雑誌などで、さんざん取り上げられてきた本については、「もう、私があらためて紹介しなくてもいいんじゃないの」という気持ちが多少あったのです。

でも、私がレビューを書いたり、イベントで紹介させていただいたことにより、初めてその本の魅力に出会い、新しい読者が生まれる可能性もあるのだ。

そんな気持ちになり、世の中で紹介され尽くしている名作やベストセラーであっても、自分の言葉で再度紹介したり、ブックレビューを書いていこう、とあらためて思いました。

さいごに

「本屋で読者が本を売る」に出場させていただき、これは紹介する側(売り手)であっても、本のおすすめを聞く側であっても、とても楽しいイベントだな〜と感じました。

不定期開催のため、次回はいつ開催さされるかは分かりませんが、もし、ほんの入り口さんで開催予告を見かけましたら、ぜひ、参加してみてくださいね。

きっと、新たな本や本好きの方との出会いが待っています!

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