【明日8/24から放送】やったー!コミック『税金で買った本』がドラマ化!

2026/08/23

図書館員になりたい 図書館員の方に 本の周辺

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図書館を舞台にした小説や漫画(「図書館モノ」と呼ばせてください)はいくつか出版されてますし、ご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

中にはレファレンスサービスにフォーカスを当てたものもありますが、その中でも、私が非常に公共図書館の仕事や現場の課題がリアルに描かれているな!と感じているのがコミック『税金で買った本』です。 

ずいの、系山 冏『税金で買った本(1)』講談社,2021
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784065261682

図書館モノにはファンタジックな作品が多い印象ですが、この漫画はタイトルからしてリアリズムを感じます。

そう、図書館は税金で運営されていて、職員のお給料や館内の光熱費、図書などの資料も税金で購入されています(このことをご存じない方も、結構いらっしゃいます)。

私はこの漫画を知人から教えていただきました。

業務のリアルな描写に驚かされたのはもちろんですが、本離れが進む中で図書館を舞台にしたお仕事漫画が、これほど人気を集めていることにも非常に驚きました。

本に関わる業界の中だけでなく、もっと外の世界でこうしたムーブメントが起きていることに希望を感じたのです。

この漫画が、なんと2026/08/24からNHKにてドラマ化されるんです!

夜ドラ『税金で買った本』
NHK総合 2026年8月24日(月)夜10:45スタート(全32話)https://www.web.nhk/tv/an/zeikindekattahon/pl/series-tep-M6QR2KGJ11

突飛な設定から明かされる、図書館の「リアルな現場」

「図書館の職員ってカウンターに座っていて楽そう」

「仕事中に本も読めるんじゃないの?」

「貸出と返却をするのが仕事でしょ?」

一般の方の図書館員のイメージとして、何十年も前から変わっていないかもしれない図書館司書の仕事。

この作品では、図書館とはあまり縁のなさそうな不良少年が図書館でアルバイトをすることになるという、フィクションならでは設定によって、公共図書館の実務について、全く図書館を普段利用しない方にもイメージできるよう、細やかに描かれていきます。

・図書館司書のお仕事モノを読みたい

・図書館の実際の仕事や、リアルな大変さを知りたい

・無料でネット検索ができたりAIが普及する中で、図書館の存在意義を知りたい

こういう方にとって、とてもおすすめの漫画です。

この作品にはこれまでの図書館モノで描かれてきた、夢のある図書館は出てきませんが、フィクションであることを最大限に活かして、中で働く図書館員がこれまで声を上げにくかった、仕事の「負の側面」や課題についてもしっかり問題提起してくれていることに、新たな可能性を感じています。

元図書館員として、声をあげることも憚られたセクハラの現状

例えば、図書館で起こっている深刻なカスタマーハラスメントやセクシャルハラスメントの問題。

私は図書館員になる前に接客業の経験もありましたが、公共図書館におけるカスタマーハラスメントの陰湿さやその頻度には驚かされ、メンタル的にすり減りました。
選書や資料の整理を行う時間がなかったわけではありませんが、クレーム対応やクレーマー対策が想像以上に業務の中で大きなウェイトを占めていたのです。

図書館は利用者の個人情報の扱いに慎重な施設です。

そのため、職員がハラスメントに悩んでいても、告発や公表によって加害者が特定されるのを避ける心理が働きやすく、「辛くてもみんな我慢しているのだから」と声を上げられない風潮があったように思います。

このコミックに出てくるエピソード、元図書館員としては若干の設定の違いこそあれ、正直「あるある」だらけ。

これまでの図書館モノの多くが図書館のイメージを美しく描いてくれているからこそ、「これ言ったら図書館のイメージが壊れるかも……。でもこんな思いをしながら働く司書の状況っておかしくない?」となかなか表に出せなかったのが、図書館で起こっている深刻なカスハラです。

図書館には「レファレンスサービス」というものがあります、と以前このブログでも紹介しましたが、承るのは真面目な質問ばかりではありません。

例えば、このコミックの9話目「フランケンシュタイン」(コミックの何巻に収録されているか忘れてしまいました。すみません)で描かれている、電話対応のセクハラ事例。
調べものを依頼する体(てい)で電話をかけ、女性職員が対応すると分かった時点で性教育本や性的な表現がある本を持ってこさせ、その該当部分を音読させたり図の詳細を説明させたりする。
しかも、言う通りに従わないと、今度はセクハラからパワハラに切り替えて職員を脅迫する。
そして、電話口からは興奮している男性の荒い息が聞こえてくる……というエピソードでした。

驚かれるかもしれませんが、私は図書館に勤務していた頃、ほぼ同じ事例に遭遇しています。
このコミックはフィクションですが、この事例は現実なのです。

しかもその電話は、あろうことか子どもの本のカウンターにかかってきたのです。
実際には同じカウンターにいた別の職員が対応し、私は記録や証言のために横でサポートしていました。
幸いその時間帯は親子連れなど、他の利用者がいなかったからまだよかったものの、一対一で対応した職員の精神的負担は計り知れません。
私たちの現場には残念ながら白井さん(『税金で買った本』の登場人物)のような頼もしい男性職員が駆けつけてくれることはありませんでした。

加えて、このような悪質な利用者が、貴重な勤務時間に2人の職員の手を止めたことに対しても、強い憤りを感じました。
この間に、おはなし会のリハーサルや購入する資料の選定など、サービス向上のための取り組みができたはずなのです。

このコミックで描いてくれなかったら、子どもの本カウンターは「平和でストレスがなく楽な職場」だと、利用者からは永遠に思われ続けていたかもしれません。

私は一人の司書として、そのことがとても悔しい。

このようなカスハラは多数の公共図書館で起こっていると思いますが、被害側からはハラスメントの内容を説明すること自体も憚られるような内容です。

よって、声を上げること自体が難しく、十分な実態調査なども行われていないのではないか、と思います。

現場で働いている司書の多くは女性です。
しかし、図書館学の研究者や図書館の運営に関わっている国や自治体の上層部、図書館に関わる制度を定める側には圧倒的に男性が多く、ジェンダーバランスに偏りがあります。

そういう人たちが「声をあげればいいのに。言わなきゃ伝わらないでしょ」などと発言することで、セカンドハラスメントが起きる可能性もある。

権力を持っている側にいる男性は「職員が声を上げられない内容もあるのだ」「語られていない=起こっていない、ということではないのだ」と、気づくことすらできていない現状があります。

結局、声を上げる機会すらなく、こういったことが当事者以外誰にも知られず、これといった対応もされず、日々が過ぎていってしまっているのが多くの公共図書館の現場なのではないか、と思っています。
これでは司書が働くモチベーションを保つことができません。
私が働いていた10年以上前と、現在の状況が良い方向に変化しているのならいいのですが……。

この作品は声を上げることを諦めていた人たちの声を代弁してくれました。

ここまでリアルに描いてくれれば、被害の状況を本人が一から十まで説明する必要はなく、「私はこれに近い被害を受けたことがある」と私のようにMe Too発信をしてくれる司書が続いてくれるかもしれません。

この作品が果たしてくれた役割は、大変大きいと思っています。

そしてそういった声が集まれば、図書館でのハラスメント問題に対する意識が高まり、国も動いてくれるかもしれないのです。

図書館を利用者側の視点だけでなく、民間企業の「従業員満足度」のような視点で評価する指標がいつかは生まれ、「資料やサービスが充実している」「施設が新しい」という評価軸だけではなく、図書館が「スタッフの働きやすさ(スタッフの人権が守られているかどうか)」という軸も生まれるのではないか、と思うのです。

ちなみに掲載誌が「ヤンマガ」であることも、うまく働いていると感じます。

もともと下ネタも頻繁に出てくる作風だからこそ(笑)、こういった事例を挟み込んでもストーリーの流れを壊すことなく、また深刻になりすぎることなく一つのエピソードとしてさらっと挟むことができたのだと思います。

ドラマ化で「図書館の現状」が図書館に関心のない層にも広く知られることを願って

女性の図書館員であれば、退勤後につきまとわれたり待ちぶせされたりして怖い思いをした経験があるのではないでしょうか。

「そんなの他の仕事でも女性ならあるのでは?」と思われるかもしれませんが、私の場合、いくつかの職種を経験した中で、つきまといや待ちぶせをされたのは図書館に勤めていた時だけでした。

親身に利用者の話を聞く仕事(レファレンスや読書相談)であることや、非正規雇用が多く女性スタッフが多いことなど、図書館ならではの性質や課題が、こういった被害に関係しているのは明らかです。

また、9話目「フランケンシュタイン」で語られる、図書館員、白井さんが身体を鍛えた理由から垣間見えるのは、さらにもう一段深いテーマです。

公共図書館のサービスには、子どもや主婦(主夫)、高齢者や働いていない方など、本を買うことが経済的に難しい方々も、等しく情報にアクセスできるようにするという福祉的な役割があります。

>>図書館の役割について書いた過去の記事はこちら

しかし、それは同時に「弱者が図書館を利用して、より弱いものを痛ぶる場面にも遭遇する現場である」ということも意味しているのです。

もし自分が、一般の方を対象とした図書館の役割や現状についての講演やセミナーを任されたとしても、もっと表面的な内容に終始してしまい、ここまで深い内容を取り上げられたかどうか疑問です。

小中学生の方にも理解できる形をとりつつ、ここまで深い内容を問題提起できる「漫画」というメディアのすごさや、作者の力量に唸らされました。

現在、『税金で買った本』は20巻まで出ています。

講談社のサイト
https://www.kodansha.co.jp/titles/1000040652

主人公が読書家や本の虫ではなくヤンキーという設定のおかげで、繰り返しになりますが、本好き以外にも広く届いているのがとても嬉しいです!

(ヤンマガ掲載ということで女性司書さんからは少し手に取りづらいという声もありましたが、今回のドラマ化をきっかけに、ぜひ女性司書さんにも見ていただけたらと思っています)

かつてドラマ『地味にスゴイ!  校閲ガール』によって校閲という仕事の意義や重要性が広く知られたように、この作品のドラマ化によって、これまで図書館に関心がなかった方にも図書館の実情や仕事の意味について知ってもらえるきっかけになるのでは……と、とっても期待しています!

図書館ファンや書店ファンの皆さんはもちろん、全国の司書さんにもぜひご覧になっていただきたい作品です!

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**夜ドラ『税金で買った本』**

NHK総合 2026年8月24日(月)夜10:45スタート(全32話)

公式サイト
https://www.web.nhk/tv/an/zeikindekattahon/pl/series-tep-M6QR2KGJ11

<参考記事>

#MeToo運動とは? 意味ときっかけ、日本社会にもたらした影響はhttps://eleminist.com/article/3566
(2026/08/23 sited)

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